【9月18日 AFP】イタリア初の黒人閣僚のセシル・キエンゲ(Cecile Kyenge)移民融和担当相は13日、自分に向けられている人種差別的な脅迫や中傷は国全体を反映するものではなく、イタリアは人種差別的な国ではないと述べ、自国を擁護した。

 南米コロンビアのカリ(Cali)で開かれた「アフリカおよびアフリカ系の市長と各国指導者による第3世界サミット(Third World Summit of African and African-descent Mayors and Leaders)」に出席したイタリア移民融和担当相のキエンゲ氏は「イタリアは人種差別的でも、排外的でもない。人種差別的な出来事はあるが、だからといって国全体をレッテル貼りしてよいことにはならない」と述べた。

 元眼科医のキエンゲ氏はコンゴ(旧ザイール)生まれで、イタリア国籍を取得している。しかし、アフリカにルーツを持つイタリア初の閣僚として4月に就任して以来、公務で訪れる先々で強烈な反移民感情をもって迎えられ、人種差別的な罵詈(ばり)雑言さえ浴びせられている。

 極右政党の「北部同盟(Northern League)」の幹部からはオランウータンにたとえられ、最近の政治集会ではバナナを投げつけられた。今月初めにはキエンゲ氏が演説を予定していた街で、極右過激派が絞死刑用のロープをつるす事件もあった。

 こうした事態について、キエンゲ氏は、自分や移民たちに向けられている人種差別はイタリアが「流出入双方向の移民の国」であることを忘れてしまった若いイタリア国民の「記憶の欠如」から来ているものだと述べ、「肌の色が違う、人種が違う人間を受け入れることが難しい人たちもいるが、そうした文化を変えることができると信じている」と語った。

 一方でキエンゲ氏は、絶え間なく脅迫の対象となっていることで、個人的犠牲を強いられていることを認め「たくさんのことが変わった。以前は多くのことを自由にできた。それが今ではボディーガードを付けて、国内を回らなければならない。自由でなくなった」と悲嘆した。しかし、イタリアにやって来る移民たちが「自分たちの選んだ国で暮らし働ける」ようになるのであれば、自分の犠牲はそれに値すると言い添えた。(c)AFP