【9月14日 AFP】スペイン北東部カタルーニャ(Catalonia)自治州では11日、独立を求める「人間の鎖」が数百キロにわたって作られたが、その独立に向けられた熱意は、経済政策で中央政府から不当に扱われているという不満を持つ人々の心の奥底から湧き出ているものだ──。

 スペイン国内の商工業の一大中心地であるカタルーニャ自治州の人々は、中央政府に対してあまり良い感情を持っていない。その多くは中央政府から不当に課税され、一方で公共投資に関する誓約は十分に果たされていないと考えている。

 カタルーニャ自治州のアルトゥール・マス(Artur Mas)州首相は、11日の「カタルーニャの日」に行われた「人間の鎖」デモ開催を前に、中央政府の「不当な」経済制度を批判する意見記事を米紙ニューヨークタイムズ(New York Times)に寄稿している。

 この中で同首相は「カタルーニャ自治州の(中央政府に対する)貢献度は国内平均を上回っている。しかし(中央政府からの)人口1人当たりの公共支出は、スペイン国内の半分以上の地域よりも少ない」と指摘。さらに「政府は、行うと約束した投資についても怠っている」と続けた。

 カタルーニャ自治州では、750万人が失業しており、失業率は23.85%に上っている。スペイン全土の平均失業率26.26%よりは低いが、それでも高い数字だ。そして公的債務は509億ユーロ(約6兆7400億円)に上る。

■バルセロナ港の鉄道計画

 地中海沿岸最大級の港であるバルセロナ港では、トラック運転手のダニエルさん(36)がカタルーニャ自治州以外の地域に対する過剰な公共投資について苦言を呈した。「他の地域に対しては、使われもしない空港や高速鉄道などに対して公共投資が行われている。バルセロナ港には何もなしだ」

 バルセロナにあるポンペウ・ファブラ大学(Universitat Pompeu Fabra)の政治学者フェラン・レケホ(Ferran Requejo)氏は「一般的な感覚としてあるのは、カタルーニャ自治州の諸問題が中央政府による経済・税制・インフラ面での不当な扱いに起因しているということだ」と指摘した。

 バルセロナ港はその良い例だ。港周辺で起きている交通渋滞を緩和するため、数年前から鉄道の建設が約束されているが、その約束はこれまで果たされていない。

 先月には、自治州と中央政府との緊張状態を緩和するために、マス自治州首相とマリアノ・ラホイ(Mariano Rajoy)首相が非公開の会談を行った。その後、先週になり、バルセロナ港と中央政府はようやく2015年中の鉄道建設で合意に至った。この建設計画では、1億ユーロ(約130億円)を中央政府とバルセロナ港が共同で出資し、同年中の完成を目指す内容となっている。

 1か月に及ぶ交渉を乗り切り今月4日、合意に関する調印式に出席したマス自治州首相は「問題があっても解決方法は必ずある」と述べ、中央政府に「これを例に」その他の問題にも当たるよう要請した。(c)AFP/Daniel BOSQUE