【8月30日 AFP】地球の生命の誕生は、火星から飛来した隕石(いんせき)によってもたらされたカギとなる鉱物のおかげだという新説が29日、発表された。

 カギを握る要素は、酸化鉱物の形態の「モリブデン」という元素だ。この形態のモリブデンは、生命の形成に欠かせない要素の炭素分子が分解してベトベトしたタール状物質になるのを妨げる働きをする。

 この説を提唱するのは、米ウエストハイマー科学技術研究所(Westheimer Institute for Science and Technology)のスティーブン・ベナー(Steven Benner)教授だ。同教授は、イタリア・フィレンツェ(Florence)で開催される地球化学者の国際会議でこの説を発表する予定だ。

 ベナー教授は「初期の生命がどのようにして形成されたかにモリブデンが影響を与えられるのは、モリブデンが高度に酸化された場合に限られる」と声明で述べている。「この形態のモリブデンは、生命誕生当初の地球では得られなかったかもしれない。30億年前の地球の地表には酸素がほとんどなかったからだ。だが火星にはあった」

 荒れ狂う環境だった当時の太陽系では、初期の地球には彗星(すいせい)や小惑星が何度も衝突していた。火星もまた、この激しい衝突にさらされていただろう。火星の地表は衝突の衝撃で砕かれ、破片となって宇宙空間に飛び出し、そこを漂っているうちに、最終的に地球の重力で捕捉されたのだろう。

 火星の隕石に関する最近の分析で、モリブデンとホウ素の存在が明らかになった。ホウ素もまた、水の腐食作用からRNA(リボ核酸)を守る働きによって、生命を育むのを助けたのだろう。

 ベナー教授は「実はわれわれは皆火星人であり、生命は火星で始まり岩に乗って地球にやって来たという説が、この証拠によって構築されるように思われる」と話す。「それにしても、われわれがここ地球にたどり着いたのは幸運だ。生命を維持するという点では、地球は確かに火星より優れているからだ。われわれの仮説上の火星の祖先が火星にとどまっていたなら、語るほどの話はなかったかもしれない」(c)AFP