【8月16日 AFP】地球温暖化が原因で、リンゴの果実の堅さはある程度失われたが、甘みは増したという調査結果をまとめた論文が15日、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。

 調査を行った農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所(National Institute of Fruit Tree ScienceNIFTS)などの研究チームによると、日本国内2か所の果樹園で1970~2010年に収集されたデータを解析した結果、気候変動がリンゴの味と質感に影響を及ぼしている明らかな証拠が示されたという。

 研究チームは「そのような変化はすべて(リンゴの生育期における)開花の早期化と気温上昇に起因する可能性がある」と論文に記している。

 世界のリンゴ生産量は年間約6000万トンで、全果物のうち3番目に多い。地球温暖化によるリンゴの木の開花の早期化や、降雨量と気温の変化が収穫量に与える影響については、これまでの研究で明らかになっていた。

 今回の調査の対象となった果樹園は、世界で最も人気が高い品種の2種、「ふじ」と「つがる」を生産している。果樹園がある長野県と青森県は、それぞれ平均気温が10年ごとに0.31度と0.34度上昇している。この2か所の果樹園が選ばれた理由は、長期間にわたって品種と運営方法に変化がないため、リンゴの変化に影響する生産技術の改善など、気候以外の要因が排除されるからだ。

 長年にわたり収集されたデータには、酸度、糖度、果実の堅さ、蜜病(リンゴの果肉内に水分の多い部分ができる病気)などの測定値が含まれている。

 分析の結果、時と共に酸度、果実の堅さ、蜜病は減少した一方、糖度は増加したことが分かった。

 論文の共著者、NIFTSの杉浦俊彦(Toshihiko Sugiura)氏は「リンゴの甘みが増すのは好ましく、堅さが失われるのは好ましくないと、われわれは考えている」とAFPに語る。「大半の人々は、甘くて堅いリンゴの果実を好むが、人それぞれに好みはある。軟らかいリンゴは日本語で『ボケ』と呼ばれる。さえないぼけた果実という意味だ」

 論文は、今回の調査結果について、「市場でのリンゴの味と質感という特性が、長期的な視点から見ると変化しているが、消費者はその微妙な変化には気付いていないかもしれないということを示唆している」と述べている。また研究チームによると、今回の研究は、気候変動が食べ物の味と食感に与える変化を測定した世界初の研究だという。(c)AFP