【8月13日 AFP】昨年オランダの美術館からパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)などの名画7点が盗み出された事件で、2枚の絵画の鑑定を依頼された鑑定士のルーマニア人女性が、今年1月の容疑者逮捕につながる容疑者特定に貢献していたことが分かった。

 この鑑定士はルーマニア歴史博物館(National Museum of Romanian History)のマリアナ・ドラグ(Mariana Dragu)氏。ルーマニア紙アデバルル(Adevarul)、オランダ紙NRCハンデルスブラット(NRC Handelsblad)とのインタビューで同氏は、鑑定を依頼された際、目にした2点の絵画がロッテルダム(Rotterdam)のクンストハル(Kunsthal)美術館から盗まれたものであることに気付き、「何とかしなければと感じた」と語っている。

 事件は昨年10月、同美術館からピカソやポール・ゴーギャン(Paul Gauguin)、クロード・モネ(Claude Monet)などの絵画計7作品が盗まれたもの。今年に入って逮捕された主犯格のラドゥ・ドガル(Radu Dogaru)被告の母親が、証拠を隠滅する目的で絵画を焼却したと捜査当局に語ったことから、名画の行方が懸念されている。

■唯一撮影した写真が決め手に

 ドラグ氏は盗難事件が起きた翌月の2012年11月に友人の美術品収集家から、購入を考えている絵画2点が贋作(がんさく)でないか確認してほしいと鑑定を頼まれた。首都ブカレスト(Bucharest)のある住宅を訪ねると、友人の他に男性2人がいたが、このうちの1人は後に盗難事件の容疑者だったことが判明する。「名画盗難事件のことは知っていたが、絵画の写真などは見ていなかったので、自分が目にしている絵が盗まれたものだとは、すぐには気づかなかった」とドラグ氏はいう。

 2枚の油画を慎重に鑑定したドラグ氏は、それがゴーギャンの作品『Femme Devant une Fenetre Ouverte, dite La Fiancee』(開いた窓の前の女、婚約者)と、アンリ・マチス(Henri Matisse)の『La Liseuse en Blanc et Jaune』(白と黄に囲まれて本を読む人)の本物であることを発見し、大きな衝撃を受けた。

「彼らからは英国から入手したものだと聞かされた」が、それまでにドラグ氏は2点が盗品であることを確信していた。絵画の時価を尋ねられたドラグ氏は、この絵画で金銭を得る唯一の方法は、ごみ箱で見つけたなどと理由をつけて警察に渡すことだと伝えたという。

 ドラグ氏が許された写真撮影はマチス作品の背面1枚だけだったが、そこには世界各地の美術展で展示されたことを示す複数のラベルが貼られていた。

 帰宅したドラグ氏はインターネットで調べ、自分が鑑定した2枚の絵画が、クンストハル美術館から盗まれた名画7点のうちの2点であることを知り、翌日当局に通報した。盗まれた絵画がルーマニアにあると聞かされたオランダ警察は当初、信じようとしなかったが、ドラグ氏が撮影していた写真が、れっきとした証拠となった。

 ドラグ氏は「私がもっと賢くて勇気があれば、(容疑者たちに)いい買い手を知っていると持ち掛けて絵画を救うことができたかもしれないのに。それだけが残念だ」と話している。 

 2か月後、事件の容疑者3人がルーマニアで逮捕された。そのうちの1人は、ドラグ氏が盗品を鑑定した場にいた男だった。

 3人の裁判は9月に開始される。(c)AFP