【6月26日 AFP】夜明け前のほど良い冷気に包まれたオーストラリア・シドニー(Sydney)のボンダイ・ビーチ(Bondi Beach)に太陽が昇る。30人ほどの集団が、バーベルを持ち上げたり懸垂をしたり、巨大なロープを上下に動かしたりと、ハードなエクササイズに集中している。

 フィットネス市場で急速に拡大している「ブートキャンプ」は、ジムや個人でする運動の制約を避け、広々とした屋外で行うグループ・トレーニングを特徴とする。軍隊スタイルのトレーナーがついて激しい内容になることもある。

 クリスティー・ウェブスター(Kristie Webster)さん(26)はビーチでのエクササイズの後、「もう二度とやるものかと思うの。吐いてしまうし、全然楽しめない。だけど満足感が残る。これほどやりがいのあるものは他にない」と話した。身体的な不快感を得ると分かっていながら、なぜ週に数回まだ暗いうちにベッドからはい出してエクササイズするのか。「正気でないから?違うわ。単純に、健康な体を作るため、健康になるためなの」と語った。

 ウェブスターさんのトレーナー、ダン・クレイ(Dan Clay)さんは「私たちトレーナーは彼らを限界まで追い込むけれど、あくまで意欲を起こさせるような方法でやるんです。私たちは鬼軍曹ではなく、彼らを後押しするような存在です」と説明した。

■急速に高まる人気

 ブートキャンプのプログラムを提供する企業「Dangerously Fit」を経営するクレイさんによると、シドニーではここ5年でブートキャンプの人気が急速に高まった。クレイさんは「みんな、ジムに閉じこもってばかりいるのは嫌なんです。朝一番にビーチにやって来て、日の出を拝み、新鮮な空気を吸いたい。魂と体に良いことだからこんなに人気を集めているんです」と話す。

 大手スポーツクラブチェーンの経営コストや諸経費が掛からないメリットもあり、ブートキャンプはオーストラリア中に広まっている。電気ショックや険しい崖、炎などが行く手を阻む、10~12マイル(約16~19キロメートル)程度の過酷な障害物レース「Tough Mudder」など、肉体的な限界に挑戦するイベントも人気を呼んでいる。

 ブートキャンプの草分け的存在と言われるのがオーストラリア軍の歩兵だったジェームズ・“チーフ”・ブラボン(James 'Chief' Brabon)さんだ。軍にいた時に仲間のためにトレーニング法を考案したのが始まりで、その後、その効果に感動した仲間の妻やガールフレンドに合わせたトレーニング法も編み出した。

 そして2003年、ついに肉体改造プログラムを提供するフィットネス企業「Original Bootcamp」を立ち上げた。当時のフィットネス業界のトレンドはヨガやピラティスなど、より穏やかなエクササイズに向っていたため、当初は疑いの目で見られたという。「そんな時、この訓練のようにハードで、倒れるまで汗をかくトレーニング法を発表した。いや、これはうまくいかない、続かないよ。指図されるのが好きな人はいないと皆が否定した。けれども実際は、みんな、何をすべきか教えてほしがっているんだと分かった」と話した。(c)AFP/Madeleine Coorey