【6月19日 AFP】金星の地表を以前より巨大ハリケーン並みの風速で吹き荒れていた風が、この6年間でさらに3割以上も加速しているという報告が18日、欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)により発表された。

 2つの天文学者チームが、ESAの金星周回探査機ビーナス・エクスプレス(Venus Express)による画像を個別に分析し、金星の雲のパターンを観測した。

 研究チームによると、2006年にビーナス・エクスプレスが運用を開始した当時、赤道の南北緯度50度以内の高高度領域に吹く風の風速は、平均時速約300キロと記録されていた。この風が次第に加速され、現在の風速は時速400キロ近くに達しているという。

 今回の調査は、ロシア・モスクワ(Moscow)にある宇宙科学研究所(Space Research Institute)のイーゴリ・ハトゥンツェフ(Igor Khatuntsev)氏率いるチームと、産業技術総合研究所(National Institute of Advanced Industrial Science and TechnologyAIST)の神山徹(Toru Kouyama)氏率いるチームがそれぞれ実行した。

 金星は、地球よりわずかに小さく、地球に最も近い惑星で、かつては地球の姉妹惑星と呼ばれていた。初期のサイエンスフィクションでは、第2の地球となる可能性がある惑星としても描かれたが、1970年に発表された観測結果により、大気圧が地球の90倍の二酸化炭素(CO2)の大気を持ち、地表は桁違いの惑星温暖化とみられる現象によって気温457度の灼熱状態になっていることが明らかになった。金星の風系では、有毒ガスが混じり合った黄色がかった風が吹き荒れ、その風速は、灼熱の火山性平原の上空を流れる雲の最上部、高度約70キロで最高速度に達する。

 金星の風が特に興味深い理由は、惑星の自転速度より数十倍速い風速で吹き荒れる「スーパーローテーション(超回転)」をしているからだ。金星の自転速度は極めて遅く、金星の1日が終わるのに、地球の243日に相当する時間がかかる。

 今回判明した奇妙な風速の上昇と、この現象が今後も長く続くのかどうかを説明するには、さらなる研究が必要になる。(c)AFP