【連載:谷川じゅんじのアタマの中】“能作”展を通して伝えたい日本のユニークネス
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【6月3日 MODE PRESS】「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をモットーに、様々な空間とそこで繰り広げられるコミュニケーションを創造する企業「JTQ」の代表取締役社長でスペースコンポーザーの谷川じゅんじ(Junji Tanigawa)氏。東横線渋谷駅跡地で開催したUT POP-UP! TYOの空間アプローチや老舗シャンパンメゾン「KRUG」と共に取り組んだボトルクーラー制作など、最近雑誌やメディアで彼の名前を見かけることも多くなった。そんな彼がこれまで独自の美学を武器に手がけてきた数々のプロジェクトは、当然ながら各分野から大きな注目を浴びている。空間だけに留まらないモノの見方と価値観の点と点が、いつのまにか線になり、彼が常日頃から考えているコト、モノ、場所の持つパワーを確実な形へと落とし込んでいる。谷川氏が作り出す世界は、人々の記憶へと昇華され、私たちの日々のなかに浸透しはじめている。
今回半年にわたって全6回の連載企画として、そんな谷川氏のあたまの中を、毎回違った題材を取り上げながら紐解いていきたい。まず第一回目は、表参道GYREで2011年から毎年開催している「能作展(NOUSAKU)」を通した、モノとコトの発信について。伝統工芸をはじめとした日本のものづくりの特殊性と、それをかたちにして伝えることの意味を語ってもらった。
■語り手:谷川じゅんじ氏
-日本のものづくりのユニークネス
日本には、茶道や華道で「道」と言われるような、卓越したある種の品質主義があります。言わば、工芸品職人は「ものづくり道」というべきなのかもしれませんね。ある職人さんから「昔は命がけでものを作った。献上品で良いものを作れなかったら命を召し上げられるときもある。今は本当の命がけはさすがにない。昔のものの凄みはそのあかし」と聞いたことがあります。命がけで作ったものだからまず出来が違う。本気の度合いとでも言うのでしょうか。それを美とする生き方をしてきたわけです。
-和を以て貴しとなす
日本人は、農耕民族だから狭い国土の中で人と人とが支え合って生きてきた長い歴史を持っています。その中で、調和や愛着、継承の文化のように、言語化されずに共有されている価値観がたくさんある。日本人の「当たり前」になっている非言語の領域は、アティテュードやモラル、文化が違えば宗教とも言い換えられるのかもしれない。こうしたコンテクストは、今もなお脈々と生きていて、日本人のDNAのレベルに決して分断されることなく確かに伝承されていると思うのです。
僕は日本人だし、この国が好き。それに、秘めているポテンシャルは色々なところで感じている。だから、日本が持つコンテクストは面白いし、もっと掘り起こしていきたい。まったく異なるもの同士にも必ず掘っていけば同じ素養を見出せるし、その部分でシナジーを作ることができれば新しいスタイルとして結びつくと思っているからね。
-能作展2013:「アップサイクル」と“IMONO CHARACTERS”
1年目は「人」、2年目は「物」、じゃあ3年目はどう進化させるかと考えたときに、能作が100年近い歴史の中で作ってきた物を「掘り起こす」作業をしてみようと思い立ちました。キーになったのは、古いものを使って、より価値の高いものに作りかえるという意味の「アップサイクル」。これが今回のテーマです。
新しい視点としてインテリア・スタイリストの長山智美さんにも参加してもらいました。実際に高岡にある工房に行くと、埃をかぶった鋳物の中に「素敵なもの」や「可愛いもの」が沢山あった。例えば、昔は華道のある流派のために作られた花器。それ自体はアノニマスなのだけど、デザインとしてとてもモダンで美しかった。展示の構成も大幅に変えて、花器はキャンドルスタンドに、仏具の花入れを照明器具として再現し、ロングテーブルを用いた「食卓」のシチュエーションでみせます。そして、「素敵」の対極もほしかった。そこで、形が可愛い“IMONO CHARACTERS(イモノ・キャラクターズ)”を作りました。もとは香炉や蓋のつまみなど何かのパーツだったもの。例えばペーパーウェイトにもできるし、今の日常生活にも自然にとけ込むと思います。
-伝統工芸という切り口から外す
展示空間の中で、能作という主体とそれを期待して来てくれるゲストの関係をいかにコンポーズさせるかという時に、ライフスタイルのゾーンにある“fun”の領域に触れるものにしようと思いました。つまり、おいしい食事はワクワクするものだから「食」というメタファーを使ったシーン。もう1つが、日常の中のちょっとしたハプニングによる昂揚感を“カワイイ”と捉えて、「キャラクター」にして表現しようと考えたのです。今まで能作というブランドを知らなかった人たちが興味を持ったり、能作の仕事自体が広がっていく機会になったりと、関わった人たち全てがWin-Winになれるものを目指しました。
この“IMONO CHARACTERS”は、言語的なコミュニケーションはできないけれど、非言語のコミュニケーションはできる。物にもエネルギーがあるから、そこを紐解くのは面白いしビジネスとしての可能性もある。凄いものも可愛いものも、同じ職人が同じ技術で作っているわけですからね。
皆がまだ気付いていない、忘れかけている日本のユニークネスを、色々な形や方法でみせるべきだと思っています。伝統工芸にはストイックなものがあれば、「抜け」ているものもある。日本のものづくりの凄さとハイエンドからエントリーまでのレンジをグローバルな土台で理解してもらうことで、日本がその技術力を活かした世界のハイエンドな“請負国家”になればいいと思っています。【山口達也】
<展覧会情報>
『能作展2013』
会期:2013年5月31日(金)~6月25日(火) 11:00~20:00
場所: GYRE 3F 「EYE OF GYRE」
住所:東京都渋谷区神宮前 5-10-1
問い合わせ: 03-3498-6990
http://gyre-omotesando.com/
入場無料
Sponsor : GYRE
Cosponsor : NOUSAKU CORPORATION
Space Compose : JTQ Inc.
Interior Styling : Tomomi Nagayama
(c)MODE PRESS
ニュース提供社について
今回半年にわたって全6回の連載企画として、そんな谷川氏のあたまの中を、毎回違った題材を取り上げながら紐解いていきたい。まず第一回目は、表参道GYREで2011年から毎年開催している「能作展(NOUSAKU)」を通した、モノとコトの発信について。伝統工芸をはじめとした日本のものづくりの特殊性と、それをかたちにして伝えることの意味を語ってもらった。
■語り手:谷川じゅんじ氏
-日本のものづくりのユニークネス
日本には、茶道や華道で「道」と言われるような、卓越したある種の品質主義があります。言わば、工芸品職人は「ものづくり道」というべきなのかもしれませんね。ある職人さんから「昔は命がけでものを作った。献上品で良いものを作れなかったら命を召し上げられるときもある。今は本当の命がけはさすがにない。昔のものの凄みはそのあかし」と聞いたことがあります。命がけで作ったものだからまず出来が違う。本気の度合いとでも言うのでしょうか。それを美とする生き方をしてきたわけです。
-和を以て貴しとなす
日本人は、農耕民族だから狭い国土の中で人と人とが支え合って生きてきた長い歴史を持っています。その中で、調和や愛着、継承の文化のように、言語化されずに共有されている価値観がたくさんある。日本人の「当たり前」になっている非言語の領域は、アティテュードやモラル、文化が違えば宗教とも言い換えられるのかもしれない。こうしたコンテクストは、今もなお脈々と生きていて、日本人のDNAのレベルに決して分断されることなく確かに伝承されていると思うのです。
僕は日本人だし、この国が好き。それに、秘めているポテンシャルは色々なところで感じている。だから、日本が持つコンテクストは面白いし、もっと掘り起こしていきたい。まったく異なるもの同士にも必ず掘っていけば同じ素養を見出せるし、その部分でシナジーを作ることができれば新しいスタイルとして結びつくと思っているからね。
-能作展2013:「アップサイクル」と“IMONO CHARACTERS”
1年目は「人」、2年目は「物」、じゃあ3年目はどう進化させるかと考えたときに、能作が100年近い歴史の中で作ってきた物を「掘り起こす」作業をしてみようと思い立ちました。キーになったのは、古いものを使って、より価値の高いものに作りかえるという意味の「アップサイクル」。これが今回のテーマです。
新しい視点としてインテリア・スタイリストの長山智美さんにも参加してもらいました。実際に高岡にある工房に行くと、埃をかぶった鋳物の中に「素敵なもの」や「可愛いもの」が沢山あった。例えば、昔は華道のある流派のために作られた花器。それ自体はアノニマスなのだけど、デザインとしてとてもモダンで美しかった。展示の構成も大幅に変えて、花器はキャンドルスタンドに、仏具の花入れを照明器具として再現し、ロングテーブルを用いた「食卓」のシチュエーションでみせます。そして、「素敵」の対極もほしかった。そこで、形が可愛い“IMONO CHARACTERS(イモノ・キャラクターズ)”を作りました。もとは香炉や蓋のつまみなど何かのパーツだったもの。例えばペーパーウェイトにもできるし、今の日常生活にも自然にとけ込むと思います。
-伝統工芸という切り口から外す
展示空間の中で、能作という主体とそれを期待して来てくれるゲストの関係をいかにコンポーズさせるかという時に、ライフスタイルのゾーンにある“fun”の領域に触れるものにしようと思いました。つまり、おいしい食事はワクワクするものだから「食」というメタファーを使ったシーン。もう1つが、日常の中のちょっとしたハプニングによる昂揚感を“カワイイ”と捉えて、「キャラクター」にして表現しようと考えたのです。今まで能作というブランドを知らなかった人たちが興味を持ったり、能作の仕事自体が広がっていく機会になったりと、関わった人たち全てがWin-Winになれるものを目指しました。
この“IMONO CHARACTERS”は、言語的なコミュニケーションはできないけれど、非言語のコミュニケーションはできる。物にもエネルギーがあるから、そこを紐解くのは面白いしビジネスとしての可能性もある。凄いものも可愛いものも、同じ職人が同じ技術で作っているわけですからね。
皆がまだ気付いていない、忘れかけている日本のユニークネスを、色々な形や方法でみせるべきだと思っています。伝統工芸にはストイックなものがあれば、「抜け」ているものもある。日本のものづくりの凄さとハイエンドからエントリーまでのレンジをグローバルな土台で理解してもらうことで、日本がその技術力を活かした世界のハイエンドな“請負国家”になればいいと思っています。【山口達也】
<展覧会情報>
『能作展2013』
会期:2013年5月31日(金)~6月25日(火) 11:00~20:00
場所: GYRE 3F 「EYE OF GYRE」
住所:東京都渋谷区神宮前 5-10-1
問い合わせ: 03-3498-6990
http://gyre-omotesando.com/
入場無料
Sponsor : GYRE
Cosponsor : NOUSAKU CORPORATION
Space Compose : JTQ Inc.
Interior Styling : Tomomi Nagayama
(c)MODE PRESS