【4月22日 AFP】今月末のオランダ新国王の即位式を祝って作曲された「国王の歌(Koningslied)」が19日に発表されたが、直後から「歌詞が愚かだ」などと酷評が殺到し、作曲家が楽曲の提供を取り下げる事態となっている。即位式が1週間後に迫るなか、即位式委員会は新たな楽曲の選定を急いでいる。

 オランダでは30日、ベアトリックス女王(Queen Beatrix、75)が退位し、ウィレム・アレクサンダー皇太子(Crown Prince Willem-Alexander)が即位して、1890年以来123年ぶりに国王が誕生する。

 問題の「国王の歌」は、オランダ系英国人作曲家のジョン・ユーバンク(John Ewbank)氏が作曲した新国王の即位をたたえるセレナーデ(小夜曲)で、伝統的な旋律とラップ音楽、合唱を組み合わせた異色の楽曲。長さは5分強で、オランダを代表するスター・アーティストら51人が参加し、30日の即位式当日にロッテルダム(Rotterdam)で開催するコンサートで演奏される予定だった。

■皇太子を「神扱い」?

 ところが、19日にこの歌が発表されるや、オランダ国民からは激しい非難と失望の声が相次ぎ、採用を中止するよう要求するオンライン署名運動まで起きた。多くの国民から「頭の悪すぎる歌詞」だと冷笑を浴びたのは、次のような部分だ。

「私は素手で堤防を作り、水の流入を防ぐ」

「3本の指を空に。さあ、さあ。それがウィレムのW。覚醒したこと、そして(野菜とソーセージで作るオランダ伝統料理の)スタンプポットを食べることを意味するWだ」

 オランダは強い平等主義とキリスト教プロテスタントのルーツを持つ国だが、この歌に対する批判もそれを反映している。オンライン署名に参加した1人は、こうコメントしている。「この歌は、まるでアレクサンダー皇太子が神か何かで、私たちは皇太子から命を授けられた子分みたいに聞こえる。捨ててしまえ!」

 批判の嵐を受け、作曲者のユーバンク氏は20日夜、米SNSフェイスブック(Facebook)の自身のページに「同国人のみなさまへ。私のツイッター(Twitter)アカウントが中傷に荒らされ、また新たに1人のフォロワーをブロックせざるを得なくなったので、もう完全におしまいにすることにしました」と表明。「この歌を適切だと感じてくれていた人には謝罪します。ですが、私は『国王の歌』の撤回をここに宣言します」と述べた。

 コンサートを主催する即位式委員会は21日、会合を開いて代案について協議。解決策を模索している。

■素人作曲の「国王ソング」が大人気

 ちなみに動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)では、中部ユトレヒト(Utrecht)の大学生2人によって数日前に投稿された「あなたこそ国王だ」と題する茶目っ気にあふれた歌が26万回以上のヒットを飛ばしており、ユーバンク氏もどうせならこの歌を代わりに演奏してはどうかと提案している。

 こちらの歌は、ウィレム・アレクサンダー皇太子の妻で国民に人気の高いアルゼンチン出身のマキシマ皇太子妃(Princess Maxima)について、「あなたは比類ない妃をお持ちだ。理想の奥方だ。もし僕が国王だったら、僕もそんな奥方を手に入れられただろうに」と歌っている。(c)AFP/Jan HENNOP