【3月22日 AFP】ファンからの差別的発言に抗議して試合中にピッチから立ち去り称賛された、イタリア・セリエAのACミラン(AC Milan)に所属するケヴィン・プリンス・ボアテング(Kevin Prince Boateng)が21日、伝染病に例えて、試合を台無しにするスポーツ界での差別根絶を訴えた。

 ガーナ国籍で26歳のボアテングは、スイス・ジュネーブ(Geneva)で行われた国連(UN)の反差別会議で、ファンからの執拗な差別的発言を無視しようと試みたが、解決のための唯一の道は正面から戦うことだと気づいたと発言した。

「差別が消滅することはありません。我々が立ち向かわなければ拡大する一方です。差別の大きな問題はワクチンのような特効薬が無いことです。抗生物質もありません。それはまるで、私たちの無関心と無為によって活性化する、とてつもなく危険で感染力の強いウィルスのようなものです」

 ドイツ・ベルリン(Berlin)でドイツ人の母とガーナ人の父の間に生まれたボアテングは今年1月、イタリア4部のプロ・パトリア(Pro Patria)との親善試合の前半途中にファンの発した差別的発言に怒りピッチを立ち去り、世界中の新聞の見出しを飾った。チームメイトは彼の行動を理解し、その後に続いた。

 ボアテングは21日の発表で、今まで一度も抵抗を試みたことはなく、キックオフからずっと止むことの無い侮辱に接した後は怒りに震えていたと語り、自身の行動が象徴化されたことに感謝の念を示した。

「私たちのように常に公衆の目にさらされている立場の者は、そうではない人たちよりも責任が重いと思います。無頓着でいたり、言いなりになるわけにはいかないんです」

 ボアテングの抗議行動の後、リーグ側は規則では主審の同意なくピッチを後にすることは許されないものの、肌の色に関する罵りを受けた選手に対して制裁を下すことはないと発表した。

 ドイツの各年代のユース代表を経験し、2010年W杯ではガーナ代表として招集されるまでに至ったボアテングは、差別への立ち向かい方を病気との闘いに例えた。

「ガーナ代表としてプレーしたとき、マラリアとどのように闘うのかを学びました。単純にワクチンを接種している人が少ないのです。そして、沼地を乾燥させてマラリアの感染源となる蚊を発生させないことも必要です。マラリアと差別はたくさんの共通点を持っていると思います」

「スタジアムは様々な民族的背景の人々が集まってひいきのチームを一緒に応援する場所にもなりえますし、健康な人々が差別という病気に感染してしまう危険な沼地にもなりうるのです」

「私たちは目の前で差別が拡大していくのを許すことは出来ません。スタジアムや、他の多くの場所には若い人たちが溢れています。もしも私たちが沼地を乾かさなければ、今はまだ健康な人たちでも、現代の最も危険なウィルスの一つに感染してしまうでしょう」

(c)AFP/Jonathan FOWLER