【1月7日 MODE PRESS】MODE PRESS特別講座をご受講のみなさま、遅ればせながら明けましておめでとうございます。本年は、より奥深い“食の愉しみ”を発信できるよう努めていきたいと願っておりますので、引き続きお付き合いいただけたら幸いです。

 さて、堅苦しい挨拶はこれくらいにして、さっそくお酒のハナシ。みなさまは新年の幕開け、どんなお酒を味わいましたか?おせち同様、お正月に欠かせないものといったら“お屠蘇”です。これは中国から伝わる何種類もの生薬を調合し、みりんや日本酒に浸して成分を抽出させたもの。邪気を払い、無業長寿を願う薬酒とされていますが、最近は日本酒のみで代用する家庭も多いのだとか。いずれにせよ、普段はビールやワインを飲まれる方も、この時期ばかりは多少なりとも日本酒を嗜んだのではないでしょうか。

■“日本酒”を飲まない日本人?

 言うまでもなく、日本酒(清酒)は我が国を代表するお酒です。美味しい米と清らかな水に恵まれ、更には熟練の杜氏の技術があってこそ完成する、日本が誇る醸造酒――。和食が海外でもてはやされるようになった昨今、それと好相性を示す日本酒もまた世界から注目を集めつつあります。

 とは言っても、我々の意識が追いついていないのも事実。例えば、周囲の同世代の女性を思い浮かべてみても、日々の生活で日本酒を頻繁に楽しむ人がどれだけいるかと言えば、片手で数えられる程度です。蔵元にまで足繁く通ってしまうような、一握りのマニアックな酒豪チームはさておき、まだまだ一般女性が気軽にサラッと国酒を嗜む文化は根付いていないように見受けられます。

 自国のお酒なのにも関わらず、なぜ日本酒がこんなにも我々に浸透していないのでしょうか?日本酒は殆ど飲まないという30代女性に尋ねたところ、「食通の方や年配の方が飲むイメージ」とか「年中行事の時にしか飲まない」とか「大吟醸とか特別純米とか、よく分からない」とか、様々なコメントが飛び交うではありませんか……。これは女性に限らず若年層全般にみられる意見で、日本酒に対して「敷居が高い、非日常のお酒」というイメージを抱いている方が非常に多いことが分かりました。

 そこで今回、そうした先入観を取り除いてくれるような、ちょっとオシャレで話題性をも持ち併せた日本酒をご紹介したいと思います。

■ワインと日本酒のコラボレーション

 まず取り上げたいのが、富山県の桝田酒造店による「Masuizumi スペシャル純米大吟醸」。750mlの容量やエチケットのデザインからは、ついブルゴーニュワインを連想してしまいます。それもそのはず、実はこちら、ブルゴーニュの名手ドメーヌ・ラモネのモンラッシェを仕込んだオーク樽で貯蔵熟成させた純米大吟醸なのです。

 まず鼻を近づければ、吟醸香とともに立ち上がる甘やかな樽の香りにうっとり。そして口に含むと、大吟醸ならではのフルーティーさと、樽のふくよかな丸みが一体となり、神秘的な味わいが広がります。圧巻は、余韻に残る優しく儚い甘味。先般、こちらのお酒を鴨鍋と合わせて楽しみましたが、マイルドで奥深い樽香とフルーティーな甘味が鴨の旨みを巧みに惹きだしてくれ、想像以上に絶妙なマリアージュ!一般に鍋料理は醇酒と呼ばれるコクがあるタイプと相性が良いと言われますが、爽やかでフルーティーな大吟醸でも、ブルゴーニュ樽の魔法によって鴨鍋に負けない濃醇さが生まれていたのです。

■「郷酒(SATOZAKE)」という概念

 次に、昨年の秋に発表された、「郷酒」という独自のコンセプトを掲げる日本酒をご紹介しましょう。これは、「故郷の人々が郷の米、郷の水、郷の風土で醸した生粋の地酒」のこと。このお酒が生まれた背景には、「地酒」の定義が明確ではなくなっている現状が挙げられます。例えば東北の地酒を謳ったとしても、酒造好適米には兵庫の山田錦を使用することもでき、必ずしもその産地で全ての原料がまかなわれる訳ではありません。

 そこに一石を投じ、“風土に根付いたお酒”としてブランディングされたのが「郷酒」です。コンセプトに賛同した20社の蔵元より、厳格な基準を満たした品のみがラインナップされ、それらはみな共通のボトルに詰められています。実は、この「郷酒」をプロデュースしているのはファッションデザイナーのコシノジュンコさん。よって、その味わいはさることながらデザイン性にも長けています。ボトルは黒地に金の模様があしらわれ、その凛とした出で立ちから、世界を視野に入れた勇ましさと、日本人ならではの繊細さが感じられるのです。東から西まで様々な産地のラインナップが取り揃えられているので、合わせたいのはやはり、その土地の郷土料理。郷愁の想いを呼び覚ます懐かしさと、世界を魅了する斬新さを兼ね備えた唯一無二の日本酒なのです。

 今回ご紹介したものに限らず、斬新な発想で生まれた様々な日本酒がいま、続々登場しています。巷でブームの爽快な発泡タイプから、ソーテルヌさながらの貴醸酒まで、そのスタイルは多種多様。その日の気分や料理に合わせて、日本酒をもっと気軽に、そしてもっと自由に楽しんでみませんか?【瀬川あずさ】

プロフィール:
聖心女子大学卒業後、施工会社の秘書を務め、飲食店の企画、設計、施工業務に携わりながら、レストラン巡りに没頭する。その後趣味が高じて、フードアナリ ストならびにワインエキスパート資格を取得。現在は、記者・ライター業、ワインスクール講師、飲食店メニュー開発などを務め、食を通じた豊かなライフスタ イルを提案するべく活動中。
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