【1月1日 AFP】未確認飛行物体(UFO)の目撃情報を集めた軍事文書から第2次世界大戦中の「津波を引き起こす爆弾」の製造計画まで、ニュージーランド公文書館(Archives New Zealand)に埋もれていた珍しい歴史文献を紹介する書籍が、このほど出版された。

 新書「Secrets and Treasures(秘密と財宝)」は、首都ウェリントン(Wellington)にある同公文書館で公開されている文献を集めた本だ。計100キロメートル近くの書棚スペースにぎっしり詰まった歴史的文献の数々に、著者レイ・ワル(Ray Waru)氏は当初、「本当に圧倒された」という。「初めに探していたのは(ニュージーランド建国の礎となった)『ワイタンギ条約(Treaty of Waitangi)』や(英国からの)独立宣言といった重要文書だった。ところが掘り出し始めると、次から次へと読み渡りたくなってしまった」

 例えば女性参政権を求めた3万6000人分の署名だ。全長300メートル近くに及ぶこの署名は、ニュージーランドがまだ英国の植民地だった1893年、賛成派によって鮮やかに議会の床の上に広げられた。これが承認されたことにより、ニュージーランドは同年、世界で初めて女性参政権が認められた場所になった。

 同書ではこうした歴史的文書のほか、「珍文書」と呼べるものも多く紹介されている。その一つが、「プロジェクト・シール(Project Seal)」の名の下にニュージーランドと米国が極秘で進めていた、核爆弾に比肩する破壊力を持つ「津波爆弾」の開発計画に関する文書だった。

■一定の成功を収めていた「津波爆弾」

 この計画が始動したのは1944年6月で、太平洋諸島のサンゴ礁を爆弾で吹き飛ばす任務についていたある米海軍幹部が、爆破により時に巨大な波が生まれることから、津波を引き起こす爆弾を作れるかもしれないと着想したことがきっかけだった。オークランド(Auckland)北方沖で行った実験の結果、科学者たちは同計画が実現可能であるとの結論に達し、沖合いで10回の大きな爆発を起こせば、沿岸部の小さな町を飲み込むことができる高さ10メートル程度の津波を生み出せると試算した。しかし小規模実験の成功にもかかわらず、計画は45年の早い時期に中止されたという。

 このほか公文書館が収蔵する奇妙な文書の中には、軍や民間のパイロットなどからニュージーランド国防省の元に寄せられた無数のUFO目撃情報に関するファイルがある。その多くは空を移動する謎の光を見たというものだが、「空飛ぶ円盤」や「(古代エジプトの王)ファラオのマスク」をかぶった宇宙人、「地球外文字」の例とされる図形を描いたスケッチなども含まれている。

 ニュージーランドで最も知られているUFO遭遇例は1978年に南島のカイコウラ(Kaikoura)沖でテレビ局の撮影スタッフが録画した「奇妙な光」だ。だが宇宙人ハンターたちにとって残念なことに、これについて軍は、船舶からの光が雲に反射したり、金星が変則的な見え方をするなどの自然現象として説明がつくと結論している。

 公文書館の文献は一見退屈そうだが、大英帝国の「美徳」をたたえた1900年代初期の学校の校内報など、作成された当時の風潮を知ることができる「窓」だとワル氏は表現する。「膨大な量の記録や重要書類があるが、その1枚1枚が当時生きた人の人生のどこかと関わっていることがすぐに分かってもらえると思う。ダニーディン(Dunedin)の街の離婚届や若い兵士が両親に書いた手紙など…現代の研究者に個人の私生活をのぞかせてくれるもので、私にとって興味深い発見だった」(c)AFP/Neil Sands