【12月23日 AFP】フランス・パリ(Paris)の宝飾店「メレリオ・ディ・メレー(MELLERIO dits MELLER)」には店の端から端までダイヤモンドやサファイアが飾られているが、サッカーファンにとってそれすら輝きを失って見えるものがある。白鉄鉱の台座に黄金の球体を取り付けた、「FIFAバロン ドール(FIFA Ballon d'Or)」のトロフィーだ。

 サッカー界の「オスカー」とも言われる同賞は、仏サッカー専門誌「フランス・フットボール(France Football)」が1956年以降選んできた世界年間最優秀選手「バロンドール(Ballon d'Or)」と、各国代表の主将と監督により1991年以降選ばれてきたFIFA年間最優秀選手(FIFA World Player of the Year)が2010年に統合されたもの。

 賞の名前とともに、賞そのものを意味するものとして統合後も残ったバロンドールのトロフィーは、ここ半世紀にわたってほとんど形を変えず、表面を金で覆った真鍮のサッカーボールと、岩の状態の白鉄鉱の台座という作りをしている。

 2013年1月7日に受賞者に手渡される、この羨望を集めるトロフィーを制作しているのが世襲経営の宝石会社「メレリオ・ディ・メレー」で、1613年の創業以来、宝石と宝飾品を欧州歴代の国王や王妃に納品してきた世界有数の老舗宝石店でもある。

 AFPの取材に対し、「賞の一端を担えてとても幸せです」とコメントしたのはフランソワ・メレリオ(Francois Mellerio)氏。同氏は弟のオリヴィエ(Olivier Mellerio)氏とともに14代目としてメレリオ社を経営し、バロンドールの他にも男子テニス・全仏オープン(French Open)の優勝者に送られる「マスケティアズ・トロフィー(Musketeers' Trophy)」の制作も請け負っている。

 約400年の事業史の中でメレリオは、真珠にダイヤモンド、プラチナをあしらったティアラから、ローマ・カトリック教会の聖体拝領で使うチボリウム、すなわち聖体容器まで、あらゆる宝飾品を手掛けてきた。

 1815年に通りで初めての宝石商としてパリのルー・ドゥ・ラペ(Rue de la Paix)に構えた店舗の地下には、ジョゼフィーヌ(Josephine de Beauharnais)皇后とウージェニー(Eugenie de Montijo)皇后からの委任状など、最も古いもので1780年にさかのぼる年代物の書類が多くある。

 このパリ店には現在12人の職人がおり、のみを使って手で削り出す伝統の技と、レーザーなどの最新の技術を併用して作業をこなしている。2012年度のバロンドールのトロフィー制作には6人が携わっている。

 時を経て、バロンドールの受賞者の機密レベルは変化してきている。数年前までメレリオは、受賞者の名前を事前に知らされていた。現在では、候補者3名の名札が作られ、発表と時を同じくして職人がそれをトロフィーに添付することになっている。

 このバロンドールが与えられる最終候補に挙がっているのは、アルゼンチンのリオネル・メッシ(Lionel Messi)、スペインのアンドレス・イニエスタ(Andres Iniesta)、ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)の3人となっている。(c)AFP/Rachel K Rogers