【12月3日 AFP】ブロガーやクラウドソーシング、さらにはコンピューターによる自動作成記事などが報道に貢献している一方で、重大ニュースの取材・報道においてはプロの記者が不可欠とする研究結果が発表された。

 米コロンビア大学(Columbia University)のトウ・センター・フォー・デジタルジャーナリズム(Tow Center for Digital Journalism)は前週、「Post-Industrial Journalism(工業化時代後のジャーナリズムの意)」と題する大規模な研究について公開した。この中で研究者らは、テクノロジーによって入手可能な情報量が爆発的に増え続けるなか、それに伴う経済変化がジャーナリズムにも正負両方の影響をもたらしていると述べている。

 また、ある種の報道においては、機械やクラウドソーシング(インターネットを介した不特定対数の人々への低賃金または無償での業務委託)がプロの記者に置き換わることはできないことにも言及している。重大事件の報道がいわゆる「素人」や機械に乗っ取られては、それは報道にとって良い時代ではない。「重大事件とは社会を変えうる重要な実話の報道」としながら、児童に対する性的暴行の容疑者をかくまうカトリック教会の実態や、米エネルギー企業エンロン(Enron)の不正会計事件、米司法省のおとり捜査にまつわる不祥事などを例として挙げた。

 そうした中、「真実を告げる者、意味付けをする者、解説する者」としての記者の役割は、「(単に)交換可能な情報源(としてのみの扱い)に切り縮められるものではない。我々には、(ある特定の人物や団体にとって)報道されたくないことを伝える記者が常に必要だ」とした。

 メディアの変化に伴い、広告に支えられる新聞や放送ジャーナリズムのあり方は大きく変わり、それは同時にニュースの生産コストが安くなることも意味する。またそうした変化より、米国ではニュースの質が落ちるとも予測している。「わが国の報道(の質)は一度悪化し、その後持ち直すだろう。特に一定の地域(日刊紙が存在しないような主に中小規模の都市)では質の低下は著しいはずだ」

■これまでの報道にプラスの影響

 研究ではまた、ソーシャルメディアやブログ、クラウドソーシングなどの登場が、これまでの報道では不可能だった部分にプラスの影響を与えていると指摘している。

 その例として、国際テロ組織アルカイダの(Al-Qaeda)の最高指導者、ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者の殺害が最初に報じられたのは、作戦を目撃したパキスタン人ITコンサルタントのツイッター(Twitter)投稿がきっかけだったことや、2011年の東日本大震災による地震や津波の被害の全体像をより提供したのはソーシャルメディアだったことを挙げた。

 また自動生成コンテンツ会社ナレーティブ・サイエンス(Narrative Science)のように、アルゴリズムを利用して様々なデータからニュースを自動で作成する技術についても利便性が高いと評価。これを併用することで、記者は時間を有効に活用できるとも述べている。

■今後のかたち

 ニュース報道はいつの時代も多かれ少なかれ「助成」されてきたものだと同研究は指摘している。通常は広告だったが、利益の低いオンライン報道への移行によって新たなモデルが模索されるとした。

 経済的に機能させる鍵は「柔軟性」。「収入は広告主、提供元、後援者、慈善家などからもたらされうる。コスト削減は提携、業務委託、クラウドソーシング、自動化などによってもたらされうる。答えは一つではない」とした。

 メディアにおける変化の一例として挙げられているのは、「ハフィントン・ポスト(Huffington Post)」のような報道サイトの登場だ。そうしたサイトは競合する他社から引用したニュースでコンテンツを「公正に」作成しており、引用での使用料もかからないという。

「ハフィントン・ポストの経営陣は、ウェブでの公正使用が意味するところを認識している。つまり(ウェブ上の)すべてが通信社的な配信であり、ワシントン・ポスト(Washington Post)紙やニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙の記事を引用し、それにコメントをつけたほうが実は読者にとって、APやロイター(Reuters)といった通信社と契約するよりも価値があるということである」

「ハフィントン・ポストのあり方はよく批判の的となっているが、これは筋違いというものだ。同社は、既存の法と新たなテクノロジーが交差する点を把握しようとしただけである」

 読者は多様な情報源を使用するが、報道機関はその合間を縫っていかなければならないと同研究は結論づけている。「慎重で詳細な分析がふさわしい場がある・・・また日常的な最新速報の氾濫からは距離を置き、長文記事で世界を描き出すのに適した場もある──しかしこれらの方法を数多くそして有効に活用できる報道機関は少なく、さらに読者が関心を持っているすべてのテーマについてこれを網羅できているところなど皆無である」

(c)AFP/Rob Lever