【11月15日 AFP】カトリック教徒が多数を占めるアイルランドで、医師に人工妊娠中絶を拒否されたとされるインド人女性が死亡した事件をきっかけに、中絶を厳しく制限する同国の法律への批判が高まっている。

 死亡したのはインド出身のヒンズー教徒で歯科医のサビータ・ハラパナバル(Savita Halappanavar)さん(31)。エンジニアの夫と共にアイルランド西部ゴールウェー(Galway)で暮らしていた。

 家族によると、妊娠17週でひどい背部痛に襲われたハラパナバルさんはゴールウェー大学病院(University Hospital Galway)に運び込まれ、「このままでは流産する」として病院職員に何度も中絶を頼んでいた。

 だがインド南部のカルナタカ(Karnataka)州から電話でアイルランドの日刊紙アイリッシュ・タイムズ(Irish Times)の取材に応じた夫のプラビーン(Praveen)さん(34)によると、病院職員らはハラパナバルさんに「アイルランドはカトリックの国」であり、胎児が生きている限り中絶はできないと答えた。ハラパナバルさんは「私はアイルランド人でもカトリック教徒でもない」と言ったが、やはり中絶は無理だと伝えられたという。

 ローマカトリック教徒が国民の大多数を占めるアイルランドでは、母体に死の危険がある場合を除いて人工中絶は禁じられている。ハラパナバルさんのお腹の中の胎児はその後心停止が確認され、10月23日に摘出されたが、ハラパナバルさんは入院から1週間後の同月28日に敗血症で亡くなった。

 病院側はハラパナバルさんの葬儀のためにインドに帰国している遺族と連絡が取れ次第、調査を開始するとしている。エンダ・ケニー(Enda Kenny)首相は14日、ハラパナバルさんの死は「悲劇」だと述べ、保健当局による調査が既に開始されていると発表した。(c)AFP/Conor Barrins