【11月5日 AFP】2010年に当時のポーランド大統領、レフ・カチンスキ(Lech Kaczynski)夫妻らを乗せた政府専用機がロシア西部スモレンスク(Smolensk)で墜落し96人が死亡した事故で、犠牲者の遺体が取り違えられていた例が出ている。

 同事故の犠牲者の1人、リシャルト・カチョロフスキ(Ryszard Kaczorowski)ポーランド亡命政府元大統領も、他の犠牲者の遺体と取り違えられていたことが判明し、前月、すでに埋葬されていた別の墓地から遺体を掘り起こされ、3日に無事ワルシャワ(Warsaw)の墓地に再埋葬された。

 カチョロフスキ氏は第2次世界大戦中はロンドン(London)を拠点に活動し、ポーランドの共産党政権が崩壊する1989年まで続いたポーランド亡命政府の最後の大統領だった。

 9月にも、同じ飛行機事故で死亡したアンナ・バレンティノビチ(Anna Walentynowicz)氏の遺体が他の犠牲者のものと取り違えられていたことが確認されている。バレンティノビチ氏は1980年代のポーランドにおける反体制運動の象徴的存在で、「連帯(Solidarity)」の創設に関わった女性活動家だ。

 2010年4月10日の事故では、第2次大戦中にソ連によってポーランド軍将校らポーランド人捕虜が大量虐殺された「カチンの森事件」から70年の追悼式典に向かうカチンスキ大統領らを乗せた政府専用機が、霧がたちこめていたスモレンスクに着陸しようとして墜落し、乗っていた96人全員が死亡した。

 操縦ミスや空港設備の老朽化が事故原因とされたが、ポーランド人のなかには、「宿敵」のロシアの陰謀と信じる者も少なくない。

 事故で死亡したカチンスキ大統領と一卵性双生児の保守系野党「法と正義」のヤロスワフ・カチンスキ(Jaroslaw Kaczynski)党首は、事故原因の究明をロシアに求めることを怠っているとして中道保守派の現政府を重ねて非難している。

 一方、ポーランドの検察当局は前週、事故機の残骸から爆発物が見つかったとの報道を否定している。(c)AFP