【10月4日 AFP】リトアニア政府は3日、ロシア政府系天然ガス企業ガスプロム(Gazprom)がガス価格設定において市場での影響力を乱用したとして、約15億ユーロ(約1500億円)の損害賠償を求め、ストックホルム(Stockholm)の仲裁裁判所に提訴したことを明らかにした。リトアニアにとってガスプロムは唯一のガス調達先。

 リトアニアのアルビダス・セクモカス(Arvydas Sekmokas)エネルギー相は記者団に、「ガスプロムによるリトアニア向けのガス価格について、ストックホルムの仲裁裁判所で仲裁手続きに入った」と話した。
 
 セクモカス・エネルギー相は、2004年に1000立方メートル当たり84ドルだったガス価格は2012年には497ドルへと大幅に値上げされたと指摘し、ガスプロムはリトアニアに公正なガス価格を適用するという誓約を守らなかったと述べた。

 その上で、同エネルギー相は、「消費者が被った損害額は最大50億リタス(約1500億円)と推計され、われわれはこれに対する賠償を求める」と述べた。また仲裁手続きには1年半~2年を要する可能性があるとしつつ、「われわれは他の国々が(ガスプロムとの間で)より望ましいガス価格で合意し、訴訟を取り下げた事例を見てきている」と述べ、裁定を待たずに問題が解決する可能性もあるとの見方を示した。

 リトアニアのアンドリュス・クビリウス(Andrius Kubilius)首相は、ドイツのエネルギー大手エーオン(E.ON)がガスプロムを相手取って訴訟を起こした後、ガス価格引き下げ交渉で合意した例を挙げ、今回の提訴もこの例に倣ったものだと述べた。クビリウス首相は、ドイツのエネルギー大手RWEやポーランドの大手ガス企業PGNiGも法的措置を取ったと指摘した。

 欧州連合(EU)は9月、ガスプロムがガス供給契約において、リトアニア、ブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、ポーランド、スロバキアのEU加盟の8か国に対して市場での強い影響力を乱用した疑いがあるとして調査を開始した。ガスプロムが価格を固定するため長期契約を適用していることが調査の焦点になっている。長期の供給契約では、価格が市場価格を大幅に上回ることが多い。(c)AFP