【7月11日 AFP】マリ北部を支配下に収めたイスラム系反政府勢力「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」は10日、世界遺産の砂漠都市トンブクトゥ(Timbuktu)のジンガレイベル(Djingareyber)モスクにある2つの霊廟を破壊した。

 目撃証言を総合すると、アンサール・ディーンの男たちは銃を空に向けて撃って人々を追い散らし、「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら、くわ、つるはし、のみなどを使って2つの霊廟を完全に破壊した。またカタールの衛星テレビ局アルジャジーラ(Al-Jazeera)に破壊の模様を撮影するよう依頼していたという。

 アンサール・ディーンは、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)がトンブクトゥの文化遺産を「危機遺産リスト」に載せた直後の1日から同地の文化遺産の破壊を始めた。

 古いイスラム教の霊廟を「ハラム(イスラム教で禁じられたもの)」と宣言したアンサール・ディーンは、トンブクトゥに16ある霊廟のうち7か所の破壊に着手し、15世紀建造のシディヤヤ(Sidi Yahya)モスクの「聖なる扉」も破壊した。

■トンブクトゥ黄金時代のモスク

 シディヤヤ、ジンガレイベル、そしてサンコーレ(Sankore)の3つのモスクは、イスラム教がアフリカ全体に広がる上でトンブクトゥが知的、精神的に中心的な役割を果たした同地の黄金時代のもの。スルタン、カンカン・ムーサ(Kankan Moussa)が、メッカ(Mecca)への巡礼から1325年に帰った後に建立したジンガレイベルは、3モスクの中で最も古い。

 このときの巡礼でカンカン・ムーサは1人当たりトンブクトゥ産の純金3キロ携えた6万人の運搬人を引き連れてカイロ(Cairo)を経由した。ユネスコによるとそのためにエジプトの通貨が暴落し、トンブクトゥは謎に包まれた黄金の都市として地図上にその名を刻まれることになった。

 アンサール・ディーンの「メディア委員会」の委員だというアフメド(Ahmed)と名乗るチュニジア人の男は10日、「今からはトンブクトゥのことを口にした外国人は攻撃する。異教徒はわれわれのやることに関わってはならない。モスクの中にあるものであってもわれわれは全ての霊廟を破壊する」と述べた。

 3月22日にマリでクーデターが起きたことを契機に、トゥアレグ(Tuareg)人の分離主義者が同国北部の広い範囲を支配下に収めた。だが戦闘の中でそれまであまり知られていなかったアンサール・ディーンは勢力を増しトゥアレグ人から権力を奪っていった。アンサール・ディーンは国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(Al-Qaeda in the Islamic MaghrebAQIM)」と関係があると公言している。(c)AFP