【6月15日 AFP】エジプトの最高憲法裁判所は14日、ホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)前政権崩壊後に議席の3分の1に対して実施された議会選挙に憲法違反があったとして、イスラム系政党が多数を占める人民議会を無効とする判断を下した。

 政党所属者に比例代表と小選挙区の双方への立候補を認める一方、無所属候補は比例代表にしか立候補できない仕組みを違法と判断した。また、議会が可決したアハメド・シャフィク(Ahmed Shafiq)元首相らムバラク政権の閣僚経験者の出馬を禁じる法律も違憲とみなした。

 現在の議会は穏健派イスラム原理主義組織のムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)が多数派となっているが、憲法裁判所の判断を受け、立法権は一時的にムバラク政権崩壊後にエジプトを暫定統治する軍最高評議会が握ることになる。

 憲法裁判所のファルク・スルタン(Faruq Sultan)長官はAFPの取材に、裁判所の決定は議会を「無効」とすることで、「解散」を意味するものではないと説明。決定はエジプトの全ての行政機関および全国民に適用されると話した。

 エジプトでは2日後に同胞団のムハンマド・ モルシ(Mohammed Mursi)氏と、ムバラク政権最後の首相を務めたシャフィク氏との間で大統領選の決選投票が争われる。軍最高評議会は大統領選出後の民政移管を約束しているが、新大統領の権限については今週、人民議会から選出された憲法制定委員会で協議されることになっていたことから、議会が無効とされたことで政治的混迷が深まると懸念される。

 国内の活動家や政治家らは、憲法裁判所の判断を軍部による「クーデター」だと非難している。(c)AFP/Samer al-Atrush