【6月2日 AFP】アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)による、女子生徒たちをターゲットにした毒攻撃――最近、地元新聞に度々取り上げられているニュースだが、ここにきて専門家らは生徒たちの症状が「集団ヒステリー」である可能性を指摘している。

 前週報じられた「攻撃」では、同国北部タハール(Takhar)州の学校の女子120人以上が失神したり体調不良を訴え、病院に搬送された。地元当局は、正体不明の「毒性の粉」で空気を汚染したとして、これをタリバンの犯行と断定した。タリバンは国を支配下においていた1996~2001年の間、女子の教育を禁止していた。

 女子生徒が集団で失神する事件は今年だけでも他に2件発生しており、それぞれ「ガス攻撃」「毒が混ぜられた水」などが原因とされている。

 子どもたちは大抵、病院に搬送された後すぐに家に帰される。そして毎回、当局者が原因を探るべく女子たちから毒素のサンプルをとって検査を約束する。

 通常、事件のその後の情報は何ももたらされない。しかしAFPが問い合わせたところ、アフガニスタン政府および同国に駐留する北大西洋条約機構(NATO)軍も、毒が存在した証拠を1度も発見していないことが明らかになった。

 他方、社会学者のロバート・バーソロミュー(Robert Bartholomew)氏は、全ての事例に集団性の心因性疾患の「特徴がみられる」と指摘している。

■過去の戦時下でも似た症例パターンが

 アフガニスタン内務省のサイード・エダヤ・ハフィズ(Sayed Edayat Hafiz)報道官は、政府による検査では「これまで、なんらかの毒やガスが使われた証拠を示すものは何もない」と語った。

 さらにNATOが主導する国際治安支援部隊(ISAF)の報道官も最近、同国東部ホースト(Khost)州で200人の高校生らが体調不良を訴えた際にサンプルを収集したものの、初期検査の結果は「空気、水、その他のサンプルすべてが、有害物質について陰性という結果だった」と語った。検査は今後も続けられるが、報告された症状を引き出すような異物が発見される可能性は低いという。

 社会学者兼作家のバーソロミュー氏はAFPの取材に対し、これまでの事例は「集団心因性疾患、つまり集団ヒステリーの特徴がすべて現れている」と語っている。

 ニュージーランドを拠点とするバーソロミュー氏は、1566年までさかのぼって欧州の学校で起きた集団心因性疾患の症例600件を研究しており、「アフガニスタンで起きている事件はそれらの症例のパターンと一致する」と明言する。「アフガニスタンの事例の明確な特徴は、多数の女子生徒が集まっていること、毒物がないことが顕著なこと、一時的かつ軽微な症状、急激な体調の悪化と改善、もっともらしい噂のまん延、異臭の存在、戦時下にあることのストレスなどが含まれる」

 バーソロミュー氏によると、戦時下では1983年のパレスチナや1989年のグルジア、1990年のコソボでも同様の症例がみられたという。同氏は「タリバンに対する社会全体の恐怖心から」数々の集団ヒステリーが起きているとの見解を示した。

 アフガニスタンは過去30年間にわたって紛争状態が続いている。政府の精神衛生担当局によると、国民の半分は、紛争によるトラウマ、うつ病、不安神経症に悩まされているという。

 タリバンは27日、アフガン・イスラム通信(Afghan Islamic Press)を通じ声明を発表し、女学校に対する毒による攻撃にはまったく関わりがないと主張した。(c)AFP/Lawrence Bartlett

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