【2月25日 AFP】二酸化炭素排出量という観点からレストランのメニューを眺めたとき、最も環境に与える負荷が高いのは、意外にもさりげないメニューである「小エビのカクテル」だという研究結果が前週、米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)で発表された。

 米オレゴン州立大(Oregon State University)の生物学者のJ・ブーン・カウフマン(J. Boone Kauffman)氏は、土地をどう利用するかの決断が環境に及ぼす影響について理解を促すために、土地利用とその結果の比較方法を開発した。

 エビがアジアの一般的な養殖場で繁殖された場合、二酸化炭素排出量の指標であるカーボン・フットプリントは、エビ100グラムあたり「198キロという驚くべき高さ」となるという。研究チームがインドネシアで行った調査によれば、冷凍エビ1ポンド(454グラム)を生産するために排出されている二酸化炭素は1トンに上る。

■環境的には牛肉よりもコストの高いエビ

 世界のエビ養殖池の50~60%はアジアの潮間帯にあるが、その大半はマングローブ林を伐採して造られたものだ。「カーボン・フットプリントでいえば、熱帯雨林を牧草地にして同じ量の牛肉を生産した場合と比べると、エビのほうが10倍高い」とカウフマン氏は論文で指摘している。これには養殖池の開発や飼料、エビの加工や保存、出荷などから排出される二酸化炭素は含まれていない。

 また同氏はエビの養殖池について、マングローブ林をつぶしても13.4平方メートルあたり1キロのエビしか生産できないうえ、養殖池はエビの疫病や土壌の酸性化、汚染などにより造成してから3~9年で使えなくなるため非効率だとも指摘している。さらに廃池になった後の土地は回復するまでに35~40年かかるという。

 米自然保護団体コンサベーション・インターナショナル(Conservation International)のエミリー・ピジョン(Emily Pidgeon)氏は、沿岸沿いの生態系や人間の居住区を保護している手付かずのマングローブ林は非常に有用だが、問題はその価値を測りにくい点にあると説明する。またエビの養殖池の多くは貧困地域にあり、「環境を保護する経済的余裕がない」のも難点だ。

 今回のレストラン・メニューのカーボン・フットプリント計算は、森林や草地、水路、空気といった生物・生態系が人間の居住地域に与える経済的価値をモデルを使って測定する「生態系サービス」という比較的新しい経済学分野だ。「森林破壊や土地被覆の変化が地球温暖化に与える影響を理解しやすい方法で提示するには、温室効果ガス排出を地球規模から個人規模に置き直して考えるとよい」とカウフマン氏は述べている。(c)AFP