【1月25日 AFP】3月に展示が予定されているレオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)作品の修復をめぐり、仏パリ(Paris)のルーブル美術館(Louvre Museum)が揺れている――修復方法に異議を唱える2人の専門家らが、同美術館によりダビンチの名作が危機にさらされていると警鐘を鳴らしているのだ。

 問題となっているのは、ルーブル美術館所蔵の『聖アンナと聖母子(The Virgin and Child with Saint Anne)』。ダビンチが1503年に制作を開始した未完の作品である。

 20世紀に行われた修復では、作業で使用された保護材中の成分が経年劣化し、聖母の衣服などにしみが付いてしまった。これを受け、ルーブル美術館は2010年、再修復の実施を決定した。

 ルーブル美術館では、『聖アンナと聖母子』を中心とした展覧会を3月に企画している。しかし前年秋、専門家らが再修復により作品が傷付けられると抗議し、芸術界の重鎮2人が修復作業を監督する諮問委員会を辞任している。

 2011年10月、ある仏芸術専門誌が「レオナルドの危機」と題した記事を掲載し、再修復作業について警鐘を鳴らした。

 問題とされたのは、黄褐色をした保護層を溶かすための溶剤で、専門家によると、この溶剤が強すぎるために保護層下にある顔料への影響が懸念されるという。

 特に心配されるのが聖アンナと聖母の顔部分、さらには「スフマート」と呼ばれる技法で塗られた透明な層である。輪郭線をなだらかにぼかす絵画の技法で、『モナリザ』でも使用されている。(c)AFP

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