【9月23日 AFP】オーストラリアの先住民アボリジニのゲノムを解析した結果、彼らの祖先は現代アジア人の祖先より以前に地球上を横断していた可能性があることが明らかになったと、国際研究チームが22日の米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

「出アフリカ」後の人類の移動について新たな光を投げかける発見で、アボリジニが他の集団よりも2万4000年ほど前に移動を開始した勇敢で類まれな冒険者たちの子孫であることを示唆している。

 根拠となったのは、西オーストラリア州ゴールドフィールズ(Goldfields)付近に住むアボリジニの男性から英国の人類学者に寄贈された100年前の髪の毛一房だ。DNA解析では、現代のヨーロッパ系オーストラリア人に由来する遺伝子は1個も見つからなかった。

 このことから研究チームは、最初に移動を始めたのはアボリジニの祖先たちで、アジア経由でオーストラリアに渡ったのではないかと考えた。解析結果からは、アボリジニの祖先が約6万4000~7万5000年前に他の人類の祖先たちから分かれ、約5万年前にオーストラリアに到着した可能性が示唆されるという。

 研究を率いたデンマーク・コペンハーゲン大(University of Copenhagen)のEske Willerslev氏は次のように話している。「ヨーロッパ人とアジア人の祖先がまだ冒険の旅に出ず、アフリカか中東のどこかでのんびりしていた頃、アボリジニの祖先たちははるか遠くまで移動していた。現生人類では初めて、アジアという未知の地を横断し、海を渡ってオーストラリアに入った。並はずれたサバイバル術と勇気が必要だったに違いない」

 論文は、アボリジニを「アフリカ以外では最も古くから存続している集団」「現在住んでいる土地に最も長く住み続けている集団」と称している。(c)AFP