【9月16日 senken h】すてきなブランドと製品が生まれるには必ず、それを支える職人技やモノ作りの現場がある。そんなファッションブランドのクラフトマンシップに迫る「アトリエのチカラ」。

 「これまで見たことのない素材に触れたとき、デザイナーは新たなファッションを生み出す。そうした新デザインを切り拓く新素材を開発していく。クリエーションはそうして進化していく」。小野元延社長はファッションに関わっている自らのモノ作りをそう表現する。小野莫大小(メリヤス)工業は海外有名ラグジュアリーブランドに素材を提供している。一般にその名が知られることは少ないが、ヨーロッパのブランドや著名デザイナーにとって「ONO」はコレクションには欠かせない存在になっている。 

 コットンなどの天然素材で、合繊素材に負けない薄くて軽い素材はできないだろうか−−同社の挑戦はここから始まった。今から10年前、薄手の生地はまだ競争相手が少なく、服地ではニッチな分野。それも合繊素材ばかりが注目されていた。だから当時の業界にはコットンで薄手の素材開発にノウハウはない。既存の糸をどう組み合わせても小野社長の理想とする生地にはならなかった。「糸の撚(よ)り方など、まさに試行錯誤の連続。あきらめかけたこともあった」と小野社長は当時を振り返る。

 しかし、「ある時、偶然に見つかった」という糸作りが特許素材「コズモラマ」を生み出した。まるでシルクのような光沢、綿毛に触れるような柔らかさを持つ。「これを海外ブランドに売り込もう」とパリの素材見本市に出展した。初めてのタッチとなるこの素材をデザイナーたちは絶賛した。この3年間でアメリカ、フランス、イタリア、イギリスのアパレルへと販路が広がっていった。

 「デザイナーと思いを共有することが私たちにとっては最も大切なこと。彼らとともにファッションの新しい世界を作り上げていくことが多くの人を幸福にする、その一助になると信じる」と小野社長。その目は次を見据えている。(c)senken h / text : 村上洋一

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特集:senken h 115
小野莫大小工業 公式サイト