【8月11日 AFP】10日に試験航行を開始した中国初の空母「ワリャーグ(Varyag)」について、中国との間に領土問題を抱える近隣諸国への圧力として使われるだろうと専門家は見ている。

「ワリャーグ」は旧ソ連海軍の空母で、中国が1998年にウクライナから購入後、北東部・大連(Dalian)で改修が進められていた。その処女航海は、中国国防省ウェブサイトで簡潔に発表されただけだが、南シナ海での領有権をめぐって中国との緊張が高まっている近隣諸国には、心理的な打撃を与えたはずだという。

 米シンクタンク「国際評価戦略センター(International Assessment and Strategy CenteIASC)」の中国軍事アナリスト、リチャード・フィッシャー(Richard Fisher)氏は、中国政府は空母に関する情報や写真を流す一方で、その目的にはほとんど触れないことによって、近隣諸国の「懸念をあおっている」と分析する。

「この心理戦は、現在進行中の南シナ海の領有権問題をにらんだものだ。1発の銃弾も発することなく、近隣国に譲歩を迫ろうとの中国の作戦なのだ。もしも何らかの『偶発的な事件』が起きれば、近隣諸国が反中国で団結することになりかねないからだ」(フィッシャー氏)

 一方、国営新華社(Xinhua)通信は10日の論評記事で、国連安全保障理事会の常任理事国で空母を保有していないのは中国だけであり、常任理事国でないインドでさえ1隻保有していると論じて、空母保有の正当性を主張した。

 中国軍事アナリストのデニス・ブラスコ(Dennis Blasko)氏は、「中国はワリャーグなど最新軍事装備を誇ることで、軍事先進国の仲間入りをした気分でいるのだろう」と話す。

 ワリャーグの存在は、いまや世界各地に権益を拡大し、特に原油輸入の航路確保が必須の中国にとって、戦略的にも重要な意味を持つ。専門家らは、中国がワリャーグ1隻で満足するはずはなく、既に新造の国産空母2隻の建造計画に着手しているとの見方を強めている。(c)AFP/Sebastien Blanc

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