【7月5日 AFP】オーストラリアで野生化しているラクダが温室効果ガスの排出源になっているとして、二酸化炭素(CO2)削減の取り組みの一環でラクダの殺処分が検討されていることに対し、ラクダ研究者の協会が4日、正式に抗議声明を発表した。
 
 300人のラクダ専門家が登録するラクダ科研究開発国際協会(International Society of Camelid Research and DevelopmentISOCARD)は、ラクダたちは人間が生んだ問題の犠牲になっていると怒りをあらわにしている。

 オーストラリアの野生ラクダは、19世紀に入植者が連れてきたラクダが野生化した。現在、アウトバック(Outback)と呼ばれる辺境地帯を徘徊する数は120万頭に上るが、草原を食べ尽くして植生が失われたり、排出される腸内ガスのせいで、1頭あたり年間1トンのメタンを算出している計算になる。

  ラクダの殺処分案は、豪政府のオーストラリア気候変動・エネルギー効率化省が公開した諮問書から浮上したもので、アデレード(Adelaide)の広告会社ノースウエスト・カーボン(Northwest Carbon)が、ヘリコプターからラクダを射殺するか、群れをまとめて食肉処理場へ送り、食用やペットフードに加工する処分案を提案した。

 しかし、アラブ首長国連邦に本部があるISOCARDは、この計算はばかげていると一蹴(いっしゅう)し、「ラクダの代謝効率はウシよりもよほどよい。ウシに比べて20%少ない餌で、20%多いミルクを算出する。またラクダの腸内の細菌叢(そう)は、ウシやヒツジよりも、ブタのような単胃動物に近い。したがってラクダによるメタン排出量の計算方法には疑問がある」と反論した。そして、世界にいる計2800万頭のラクダは植物を食べる生き物全体の1%にも満たないとも主張している。

 協会では、野生のラクダは食肉やミルク、皮革などが利用できるほか、観光業にも役立っており、乾燥地帯におけるかけがえのない資源とみなすべきだと述べている。

 火力発電と鉱山資源の輸出に依存するオーストラリアは、国民1人当たりの温室効果ガス排出量が世界でも最も多い国の部類に入る。政府は2012年の半ばから、温室効果ガス排出量の多い企業などへの課税を計画している。(c)AFP

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