【5月20日 AFP】英君主として100年ぶりにアイルランドを訪問した英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II)。18日にはダブリン(Dublin)で、アイルランドを代表するギネス(Guinness)ビールの工場、「ギネス・ストアハウス(Guinness Storehouse)」を、夫君のフィリップ殿下(Prince Philip)と共に見学した。だが、そこで「新鮮なギネスを一杯」とはいかなかったようだ。

 工場では、ベテラン醸造者のファーガル・マレー(Fergal Murray)さんが女王夫妻を案内。ギネスができるまでの6つの行程を2人に説明していたところ、フィリップ殿下がマレーさんに質問。「ギネスには、リフィー川(River Liffe)の水を使っているのかね?」

 リフィー川はダブリン市内を流れる川のことだ。フィリップ殿下の質問に驚いたマレーさんは、「とんでもない!山の源流の清水を使ってますよ」と答えた。

 6月に90歳の誕生日を迎えるという高齢ながら、かくしゃくとしたフィリップ殿下。次に目の前のグラスにギネスビールをつがれると、「買わせる気だな」と、おどけてみせた。

 同行した報道陣や中継映像を見守る人びとも、女王とフィリップ殿下が、ぐいっとギネスを飲み干す瞬間を今か今かと待ち構えた。

 ところが次の瞬間、まるで女王夫妻がサッカーのW杯でPKを外しでもしたかのように、大きなため息が広がった。女王が、つがれたビールには何の関心も示さずに、その場を立ち去ってしまったからだ。

 一方のフィリップ殿下は、一口でも新鮮なギネスが飲めるとの期待を捨てきれないようだったが、女王である妻がその場を後にしたのに、従わないわけにはいかない。

「フィリップ殿下は、(ギネスビールに)とても興味を持ったようだったので、当然、グラスを手にすると思ったよ。並々ならぬ関心が、彼の目に表れていたからね」と、マレーさんは語る。「ギネスが持つドラマそのものに、魅せられたようだった」

 一方、女王については「いい人だったけど、明らかに、もう次の訪問先のことを考えていたようだ。フィリップ殿下に、早く行こうと促していたから、殿下もギネスビールをあきらめざるをえなかった」と話した。

 女王夫妻には、同工場で最も貴重とされる所蔵品も披露された。それは、創設者のアーサー・ギネス(Arthur Guinness)氏が1759年、ダブリン市内のセントジェームスゲート(St James's Gate)に放置されていた醸造所を、1年45ポンド(現在の為替で約6000円)で9000年間、借り受ける賃貸契約を結んだ契約書だ。

 この話を聞いたフィリップ殿下の一言。「一体、どこの間抜けが、そんな契約にサインするんだ?」(c)AFP


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