【4月25日 AFP】オーストラリアの最大都市シドニー(Sydney)で近年、アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)監督の映画『鳥(The Birds)』さながらに、鳥たちが人間の生活を脅かしている。

 長いくちばしをもったオーストラリアクロトキが群れをなして街中のゴミ箱をあさり、オウムの大群が木造建築物に傷をつけて回る。クロガオミツスイは、とにかくその鳴き声が耐え難く騒々しい。

■人の食べ物狙うトキ

「オーストラリアクロトキは、学校の校庭などでよく見られる。教師は子どもたちに、鳥とどのように接するか教えなければならない」と、鳥類観察家のマーク・デービッド(Mark David)氏は指摘する。「駆け寄ってきたトキが生徒たちの昼食を奪っていくことも多い。くちばしが非常に長く、子どもたちは怖がっている。エサをやったりすれば、人から食べ物を奪う習性がついてしまう」

 ブリスベーン(Brisbane)では前月、トキにサンドイッチを奪われそうになった学生が、トキを追い払おうとした末に踏み殺して、120時間の奉仕活動を言い渡された。大学生側の弁護士によると、この学生は以前に大きなカラスに襲われた経験があり、鳥に恐怖感を抱いていたためトキに対して暴力的な対応をしてしまったという。

 そこまで乱暴な反応はしないにしても、たとえばシドニー・オペラハウス(Sydney Opera House)前や埠頭を散策する人々も、カモメの群れの目の前でチョコレートクロワッサンを食べるような振る舞いが賢明なことではないと知っている。

 シドニー大学(University of Sydney)の構内にも、巨大なオウムの群れが飛び回り通行の邪魔をしている。それでも、最も嫌われている鳥はオーストラリアクロトキだ。ある学生は、大学新聞に「美しい緑の芝が広がる僕たちのキャンパスを、この薄汚い生き物がのさばって台無しにしている」と怒りをこめて投稿した。

■急増した鳥たち、対処法は・・・がまん?

 鳥をめぐるトラブルは他にもある。シドニー市内では朝、目覚めるとウッドデッキがのこぎりでめった切りにされたように荒れていることを発見する住民も少なくない。これは、くちばしを健常に保つため木をかむ習性のあるキバタン(黄色いとさかを持った大型のオウム)のしわざだ。

 シドニー大の博士課程で学ぶエイドリアン・デービス(Adrian Davis)氏によると、シドニー市内の野生オウムは過去20~30年間に急増し、今やその密集度は市南部にある国立公園よりも高い。

 鳥をめぐる苦情で最も多いのは、嵐のように騒々しい鳴き声だ。特にクロガオミツスイと、オニカッコウに関する苦情が多い。というのも、これらの鳥は夜行性なのだ。「早朝なんか、木ごと燃やしたくなるね」と市内在住のある学生は話した。

 だが、野生の鳥を殺処分することは禁じられている。では、どう対処したら良いのだろうか?

 あまりできることはないと、デービス氏は言った。「天敵の鳴き声を録音したテープを流して追い払うという手もある。だが、クロトキのふん害にしてみても、鳥がもたらす問題は些細なものだ。この際、シドニーの野鳥の多様性を楽しんでみてはどうだろうか」

(c)AFP/Waheedullah Massoud