【4月4日 AFP】伝統あるフランスワインのプライドを守るのか、それとも新たな時代に迎合する道を選ぶのか――。古き良きフランスの伝統がいまだに息づく仏南部で、ワイン農家たちが今、岐路に立たされている。

 課題は、より軽い、壊れにくいワインボトルへの需要の高まりにどう応えるかだ。
 
「フランス人の遺伝子には、ワインといえばガラス瓶にコルク栓、と組み込まれているんだ。ペットボトル入りのワインは受け入れがたいよ」と、仏ワインの名産地ラングドック(Languedoc)地方でワイン農家を営むパスカル・フェルナンデス(Pascal Fernandez)さんは苦悩する。

■価格破壊で相次ぐ廃業

 だが、フェルナンデスさんら同地方のワイン農家たちは、生き残りをかけて、このワイン文化のおきてを破らざるを得ない状況にある。この7~8年というもの、ワイン業界は価格破壊が続き、危機的状況にあるのだ。

 ラングドック地方ではすでに、多くのワイン農家が廃業を決めた。オード(Aude)県では1万5000ヘクタールのブドウ畑が姿を消してしまった。35歳以下のワイン農家は2人きり。生産を続ける農家でも、わが子に家業を継がせたがる人は皆無だ。誰もが「先行きが厳しすぎる」と口をそろえる。

 そこに救いの手を差し伸べたのが、ワイン農家と提携してコンセプトワインの企画・販売を手がける「ヒュー・ケビン・アンド・ロバート(Hugh Kevin & Robert)」だった。

■伝統より「市場の要望」

 同社のロバート・ジョゼフ(Robert Joseph)氏が、英スーパーマーケット大手アスダ(Asda)向けにペットボトル入りの「グリーナー・プラネット(Greener Planet)」ブランドのワイン7万5000本の生産を持ちかけたとき、フェルナンデスさんらも熱心に耳を傾けた。

「ワイン取引のほとんどは、その場限りの関係だ。われわれは、消費者と販売業者、生産者、そしてワイン農家の四者をつなぐ長期的な関係を目指している」と、ジョゼフ氏は話す。ペットボトル入りワインの需要は、航空会社や米英のスーパーマーケット、レストランチェーンなど、バイヤーからの要望によるものだそうだ。

「わが社の事業は恐らく、ワインビジネスにおいて最も資本主義の進んだ例だろう。独自のブランドを持たず、市場の需要を先取りする先導者なのだ」とジョゼフ氏は説明した。

 つまり、ますます数を増やしつつある「現実主義のワイン愛飲家」たちが望んでいる商品が、割れる心配がなく、軽くて扱いやすいペットボトル入りのワインということになるのだろう。(c)AFP

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