【3月3日 AFP】イラクで戦死した米兵の葬儀が営まれている近くで、「兵士の死を神に感謝する」「神は同性愛者を憎む」などと書いたプラカードを掲げてデモを行い、遺族から訴えられた米キリスト教会に対し、米連邦最高裁判所は2日、教会側の行動は米憲法で保障された表現の自由にあたるとの判断を下した。

 この教会はウェストボロ・バプティスト教会(Westboro Baptist Church)で、創始者フレッド・フェルプス(Fred Phelps)牧師の親族が主な信者。同教会は「同性愛に寛容な米国に怒った神が米兵を殺した」と主張し、2006年にメリーランド(Maryland)州の教会でマシュー・スナイダー(Matthew Snyder)海兵隊兵長の葬儀が営まれた際、教会の外で抗議行動を展開した。

 スナイダー兵長は同性愛者ではなく、父親のアルバート・スナイダー(Albert Snyder)氏は名誉毀損、プライバシー侵害、故意に精神的苦痛を与えたなどとして、フェルプス牧師を訴えていた。

 しかし、最高裁は判事9人のうち8人が、教会を訴えることはできないと判断。ジョン・ロバーツ(John Roberts)最高裁長官は、「表現がもたらす影響力は大きい。人々に行動を起こさせ、喜びや悲しみの涙を流させ、本訴訟の例のように大きな苦痛をもたらすこともできる。本法廷に提示された事実からは、表現者を罰することによって(遺族がさいなまれた)苦痛に対処することはできない」と説明した。

 最高裁の意見書によると、スナイダー兵長の葬儀でウェストボロ・バプティスト教会側が掲げたプラカードには、「神は米国を憎んでいる」「9.11を神に感謝する」「アメリカは破滅する」「ゲイ軍団」「お前たちは地獄に落ちろ」などと書かれていた。

 ただ、抗議行動そのものは葬儀会場から約300メートル離れた私有地で平和裏に行われ、事前に警察の許可も得ていた。

 したがって最高裁は、プラカードは「社会的にも政治的にも洗練されたとはいえない内容ながら、(中略)現代社会に対して教会側が募る不満を抱えていたことを反映している」と判断。教会側の主張について「社会的関心をめぐる表現」とみなした。さらに、「(表現の場が)葬儀会場であるかどうかによって、以上の結論は変わらない」とも指摘した。(c)AFP/Edouard Guihaire