【9月19日 AFP】感電事故で両手、両足を失ったフランス人の男性、フィリップ・クロワゾン(Philippe Croizon)さん(42)が18日、英国とフランスの間のイギリス海峡を泳いで渡りきった。

 クロワゾンさんは特別に設計された人工のひれをつけ、英イングランド南部のフォークストン(Folkestone)を現地時間18日午前8時(日本時間午後3時)前に出発。約13時間半後の午後9時30分ごろ、フランスのヴィッサン(Wissant)沿岸に到着した。

「やったよ、素晴らしすぎるよ」と喜びの第1声を、仏ラジオ局フランス・アンフォ(France Info)にクロワゾンさんは、限界を克服することのシンボルになりたかったと語った。

 サポートチームによると、クロワゾンさんは手足に人工ひれをつけ、速度を時速3キロ程度に維持して泳いだ。四肢に障害がない人の遠泳速度は4~5キロで、それよりは少し遅いペースだった。天候状態は良好で、イルカの群れが一緒に並んで泳ぐ一幕もあった。

 金属工だったクロワゾンさんは1994年、家の屋根からテレビアンテナを取り外そうとして2万ボルトの高圧線に接触、感電して重傷を負い、手術でやむをえず四肢切断された。

 術後、療養中に病院でイギリス海峡を泳いで渡る人を取り上げたドキュメンタリー番組を見て、自分も挑戦を思い立った。2児の父親でもあるクロワゾンさんは「自分のためでもあり、家族のためでもあり、そして人生の味わいを失った、逆境にあるすべての仲間たちのために」、ぜひとも達成したいと思った。

 準備と練習には2年間をかけ、8月には仏大西洋沿岸のバンデ(Vendee)県ノワールムティエ(Noirmoutier)港とポーニック(Pornic)港の間を12時間で泳ぎきることに成功していた。(c)AFP