【8月24日 AFP】ネパールの首都カトマンズ(Kathmandu)にある同国唯一の動物園はこの夏、一度も交尾をしたことのない絶滅危惧(きぐ)種のインドサイ(イッカクサイ)のつがいにその気になってもらおうと、趣向を凝らした「ハネムーン・スイート」を設置した。

 動物園には20歳のカンチャ(Kancha)と22歳のカンチ(Kanchi)のつがいがおり、「大人」になってから大半の時間を共に過ごしているものの、交尾は一度も行っていない。

 園長はこれを飼育環境のせいだと考え、大きな「家」を用意した。床はこれまでのようなコンクリートではなく泥を使い、2頭がゆったりとつかれる大きな池も2個用意した。この新居は「ハネムーン・スイート」と名付けられた。

 園長は13日、AFP記者に「これで(絶滅危惧)種の個体数が増えることになればいいのですが」と話した。

■インドサイ苦難の歴史

 かつて、ネパールの平原とインド北部には数千頭のインドサイがかっ歩していた。だが数十年前から、密猟と生息地の減少により激減した。

 角は、中国では媚薬(びやく)として珍重され、国際闇市場で1本1万4000ドル(約120万円)の値がつくこともある。

 専門家によると、ネパールでは、2006年までの10年間続いた共産党毛沢東主義派(毛派)の武装闘争が、個体数減少に拍車をかけた。同国における現在の個体数は、わずかに435頭程度だ。

■銀行が資金援助

 動物園が得られる収入は、50ルピー(約57円)の入園料だけだ。そのため、「ハネムーン・スイート」にはインドサイをロゴマークに用いている地元の銀行が資金を援助した。

 この銀行の幹部は、「2頭は親密になりつつあると聞いています」とうれしそうに話した。(c)AFP

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