【7月16日 AFP】エイズ(HIV/AIDS)ワクチンを開発する試みは数十年前から行われているが、数年前から「大きな前進」が見られ、実現の一歩手前まで来ている──。米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious DiseasesNIAID)のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長が14日、AFPとの独占インタビューで語った。

 インタビューは、オーストリア・ウィーン(Vienna)で18日から第18回国際エイズ会議が開催されるのを機に行われた。「数年前までは、エイズワクチン研究の方向性が正しいかどうかのわずかな確証さえも得られなかった」とファウチ氏。だが、ここ数年で起こった2つの発見が閉そく状況を打破し、「重要な前進」をもたらしたという。

 1つ目は、前年、タイで1万6000人を対象に行われた臨床試験だ。「HIV感染防御率は小~中程度と、ワクチンとして実用化するには不十分な代物だったが、少なくともワクチン開発は可能だと思えるようになった。意識の上では大きな進歩だった」(ファウチ氏)

 2つ目は、ファウチ氏が所長を務めるNIAIDが、HIVの9割以上を無力化できる抗体を2個発見したことだ。この論文は前週の米科学誌サイエンス(Science)に発表されている。

■数年後にはワクチン実現か

 次のステップは、この2個の抗体がHIVウイルスのどの部分に作用するかを突き止め、その部分をワクチン利用できるかどうか臨床的に確認することになるという。

 ファウチ氏の見通しでは、数年後にはエイズワクチンが日の目を見そうだ。それまでは、エイズ対策はこれまで通り予防に力を入れる必要がある。つまり、コンドームを使用する、男性に包皮切除を施す、母子感染を防ぐ、注射器の使い捨てを徹底させる、などだ。

 また、こうした予防策に手が届くのは、発展途上国ではわずかに5人に1人だが、こうした状況を改善する必要もあると、ファウチ氏は語った。(c)AFP/Jean-Louis Santini

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