【5月31日 AFP】29日行われたアイスランドの首都レイキャビク(Reykjavik)の市議会選で、半年前に結党されたばかりの新党「ベスト党(Best Party)」が勝利し、党首でコメディアンのジョン・ナール(Jon Gnarr)氏が市長に選出される見通しとなった。アイスランド経済を崩壊させた既存政治家たちへの市民の不満が噴出した結果とみられる。

 市議会選の投票率は83%。ベスト党は得票率34.7%で、15議席中6議席を獲得した。ナール党首は同日夜、公共テレビRUVに次のように語った。「ベスト党に恐れを抱く必要はない。なぜならばベスト党はベスト(最高)だからだ。われわれが求めているのはベストなものだけ。でなければ、われわれはワースト党(最低党)かバッド党(ダメな党)と呼ばれるだろう」

■公約は「シロクマ招致」、選挙PRはユーチューブの歌ビデオ

 ベスト党の党首ジョン・ナール氏は、アイスランドでは有名なコメディアンだ。党公約は、「クリーンな政治」「市営プールでの無料タオル提供」「市動物園にシロクマを!」など。

 6か月前に結党されたばかりで、党候補者にはアイスランドのポップバンド、シュガーキューブス(Sugarcubes)の元歌手や主婦、建築家などがいる。

 選挙運動中、同党は米歌手ティナ・ターナー(Tina Turner)の「シンプリー・ザ・ベスト(Simply the Best)」を使った候補者ら自身が歌うミュージックビデオ調のPR映像を、動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿。「物事が腐敗してきたので、わたしたちが掃除にやってきた」「かわいくてきれいでクールな市にしたい」などと歌にした公約を訴えた。

■既存政治にうんざりした民意

 選挙結果についてアイスランド大学(University of Iceland)の政治社会学者、Olafur Hardarsson教授は、2008年の国家経済の崩壊の原因に関する議会報告に市民が反応したと分析する。「こんなことは過去に例がない。政治家や政党、最近の政治状況に対する市民の不満が表出した結果と見るべきだろう」

 同教授は、高い投票率やベスト党の勝利に加え、白票が5%あった点を指摘。政治家らはこの結果を「深刻に受け止めねばならない」と述べた。(c)AFP/Ingibjorg Bjornsdottir

【参考】ベスト党候補者の選挙PRミュージックビデオ