【5月27日 AFP】米国の進化生物学研究チームが、多くの映画で音響効果によって観客の恐怖心や興奮が高められていることを科学的に検証し、その結果を25日発行の英科学誌「バイオロジー・レターズ(Biology Letters)」で発表した。

 陸上の脊椎(せきつい)動物は、数百年も昔から悲鳴や叫び、鳴き声など「非線形性音声(non-linear vocalisation)」と呼ばれる高音で大きな声を発声し、仲間に危険などを警告してきた。この音声は低周波音の中でよく響き渡ることが特徴で、赤ちゃんの泣き声もこの一種だ。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California Los AngelesUCLA)のダニエル・ブルームスタイン(Daniel Blumstein)氏が主導した研究によると、映画の音響効果技師らは、この「非線形性音声」を駆使して観客の恐怖感や興奮をコントロールしているという。

 研究チームはまず、欧米映画の中から一般投票によって最も人気の高かった作品102本を選出した。その内訳は冒険物が24本、人間ドラマ物または悲しいストーリー物35本、ホラー作品24本、戦争物19本となっている。

 次に、これらの各作品について、象徴的なシーンやクライマックスシーンを抜き出して効果音や背景音楽を記録。これらの周波数や音量変化をコンピューターで分析した。

■冒険物は男の叫び声、ドラマは背景音楽を多用

 その結果、冒険物では男性の叫び声が多用され、ホラー作品では騒々しい叫び声が目立ったが背景音楽はあまり使われていないことが分かった。戦争映画では音量が激しく変化。ドラマ物では低周波の効果音が多用されていたが音量変化は少なく、他ジャンルの映画と比較して背景音楽がより多く使われていた。

 こうした結果から、研究チームは映画制作者たちは意図的に「非線形性音声」に類似したサウンド効果を用いて、観客の感情をコントロールしているとみられると結論づけた。(c)AFP