【1月8日 AFP】(写真追加)生物はいかにして海から陸に上がったか――この定説を覆す、大昔に絶滅した謎の生物の化石化した足跡が、このほどポーランドの採石場で見つかったと、スウェーデン・ウプサラ大学(Uppsala University)の研究チームが英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表した。

 進化生物学において主流となっている理論は、2対のヒレを持つ魚から陸生脊椎動物(四肢動物)が進化したというものだ。

 この定説によると、進化過程の中間には、頭と体は四肢動物に似ているがヒレを持つ「エルピストステゲ類」と呼ばれる魚類が存在する。この魚類の代表格は、2006年にカナダの北極海に面するエルズミア島(Ellesmere Island)で化石が発見された「ティクターリク(Tiktaalik)」で、約3億7500万年前に生息していた大型の浅海魚だ。エルピストステゲ類の最古の化石は、3億8500万年前のものが見つかっている。

■大幅に早まった四肢動物の出現

 だが、ポーランド南東のホーリークロス山脈(Holy Cross Mountains)のZachelmie採石場で発掘された保存状態の良い足跡によって、四肢動物の出現時期とエルピストステゲ類に対する解釈に疑問が生じた。

 ウプサラ大の研究チームは、新たに見つかった「手」と「足」の跡は約3億9500万年前の生物のものだと指摘している。つまり、これまで最古とされてきた四肢動物の化石よりも1800万年古く、エルピストステゲ類の最古の化石より1000万年古い。

 これらの足跡は、当時は浅い礁湖の泥の中だった地層にあり、幅は最大26センチ。ここから、この四肢動物の体長は約2.5メートルだったと推定される。また、体を引きずった跡が見られないため、体を水に浮かせた状態で浅瀬の泥の上を歩いていたと考えられるという。

 この発見の重要な点は、四肢動物の出現時期がこれまで考えられていたよりはるかに早かったと示唆していることだ。そして、陸に揚がる前のこれらの生物は、河川デルタや湖に生息していたのではなく、浅海に暮らし泥の中を歩いていた。

■エルピストステゲ類は脊椎動物の先祖ではない?

 論文は、もう1つ重要な新説を立てている。エルピストステゲ類(少なくともこれまでに発掘されたもの)は、人類を含む陸上の脊椎動物へと枝分かれしていく進化の主流の一部ではなく、派生したもののそれ以上の進化ができなかった存在だというものだ。

 新たに発見された足跡は、魚類から四肢動物への移行における時期や生態、環境について大幅な再検討を迫るものだと、論文は述べている。(c)AFP