【11月26日 AFP】タイのキャバレーでダンサーをしているプンロップ・トンチャイ(Punlop Tongchai)さん(27)は今月11日、バンコク(Bangkok)の性転換クリニックで、わずか2000ドル(約17万円)で「女」になった。子どものころからの夢をようやく実現できたのだ。

 手術時間はたったの1時間45分。局所麻酔のみで、手術中はずっと看護師とおしゃべりしていた。

 タイは、トランスジェンダー人口が世界でも最多の国のひとつで、美容外科医らはより安く、より速い性転換術を競うように開発している。

 だが、そんなタイでの性転換手術に対する規制が、25日から強化される。女性への性転換手術を受けたい男性は、手術前に最低1年間は女性として生活し、女性ホルモンの投与を続けた上で、精神科医2人の同意書の提出が必要となる。


■規制には賛否両論

 タイでは18歳未満の性転換手術は違法とされてきた。また18歳以上20歳未満の場合は親の承諾を得なければならないが、今回の規制導入について、あるゲイ運動の活動家は、とりかえしのつかない手術を受けて後悔する人が多い中、性転換に対する法規制の強化は必要だと賛成する。

 性転換手術は、精神的な影響や術後の回復といった負担のほかにも、ホルモンに関係した副作用がある。性転換の際に投与が必要なホルモンが体に負荷をかけ、ほてりや倦怠感、体重増加や筋肉・性欲の消失などを伴うのだ。

 一方で、プンロップさんの手術を行った外科医は、「手術を受けに来た人たちは、性転換を受ける決意を非常に長い間、胸に秘めてきた。精神科医(の同意)が彼らに益するとは思えない。手術が可能かどうかは外科医が判断できる」と指摘する。

■股をさして「これ、いりません」

 手術の数日前にAFPのインタビューに応じたプンロップさんは「子どものころから、みんなが男らしいということよりも、ドレスを着たり家事をするほうが、好きだった。19歳になる前から、体型を変えるために女性ホルモンを定期的に服用していた」と語る。

「これ、好きじゃありません。使わないし」と、プンロップさんは股の間を指さしてつぶやいた。「こんなものがどうしてここにあるんだろう。ヴァギナがあればそれを使うのに」。手術ではペニスの皮膚を用いてヴァギナを形成してもらった。手術当日に自宅に帰ることができ、手術から4週間以内にすべての予後検診が終了した。(c)AFP/Claire Truscott