【8月26日 AFP】「キキはおとなしくて、とても愛嬌(あいきょう)があるチンパンジー。新しい家族を待っています」――インターネット上には、中央アフリカのカメルーンで捕獲された霊長類を売り込むこのような広告が増えている。

 広告は専門のウェブサイトに掲載されることが多い。米国、マレーシア、オランダ、ベルギー、南アフリカで需要が高く、特にゴリラやチンパンジーが人気だという。霊長類の売買が禁止されているカメルーンでは、このような広告は違法性が高い。にもかかわらず、現地の環境保護団体ラガ・カメルーン(Laga-Cameroon)によると、こうした広告により過去3年間で絶滅危惧(きぐ)種の取引が大幅に増えたという。

 違法取引の利益は大きく、地元で75ユーロ(約1万円)程度で取引されるチンパンジーの赤ちゃんが外国ではその100-200倍の値が付く。

 広告は獣医師による健康状態の証明書、指定された絶滅のおそれがある動植物の輸出入を禁止したワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and FloraCITES)事務局の許可証、1年間の健康保証をつけると称しているが、CITESはそのような個別の許可を出していない。ようするに全く虚偽の広告だ。

 顧客を信用させるため、カメルーン野生生物相の署名が入った販売許可書を偽造することも多い。数量割当制度のもと、保護対象の野生動物であっても一定数以内ならば合法的に取引できるからだ。

■当局の腐敗が障害に

 ラガ・カメルーンはブラックマーケットに潜入し、警察の捜査に協力してきた。2007年から今年8月までの間に8つの国際的な密輸業者を摘発し、その一部を壊滅させた。

 調査開始当初、ラガ・カメルーンはこの種の広告は金をだまし取るだけの詐欺だと考えていたが、実際に動物が取引される場合もあることが分かってきた。ラガ・カメルーンとカメルーン当局は今年2月、米国の捜査機関の協力のもと、インターネットの通信記録から27歳の男が2年間にわたりサルの頭蓋骨など22点を販売していたことを突き止めた。この男は逮捕され、最高で禁固20年の刑を受ける公算が高い。

 スイス・ジュネーブ(Geneva)のワシントン条約事務局のジョン・セラー(John Sellar)氏はAFPに対し電子メールで、インターネットで野生動物の違法取引が容易になっていることは確かだが、金をだまし取るだけの事例も相当数にのぼり、違法取引の規模を判断するのは難しいと述べた。

 野生動物の違法取引に詳しいある専門家は匿名を条件に、政府機関、銀行、空港、警察が腐敗し、内部に共犯者がいることが障害になっていると指摘した。(c)AFP/Reinnier Kaze