【8月23日 AFP】元プロフェッショナルのすり20人による「すりのエリート」グループが、景気低迷で落ち込んでいる英国人に罪滅ぼしの「お返し」をしようと、ロンドンの街中で通行人のポケットにこっそりお金を入れるキャンペーンを展開している。

 このキャンペーンは「プット・ポケッティング(Put-pocketing、すりを表す「pick-pocket」の反対の意)」と呼ばれ、英ブロードバンド・プロバイダー、トーク・トーク(TalkTalk)が販促活動の一環として実施している。キャンペーンを通じて総額10万ポンド(約1550万円)を配布する見通しだ。

 トーク・トークが発表したビデオ映像には、「活動中」の元すり2人が、ロンドンの街路で通行人のポケットやハンドバッグに、気づかれずに巧みに紙幣を入れる様子が映し出されている。

 ところがロンドン警視庁が、このイベントに難色を示した。トーク・トークはこのキャンペーンについて警察に事前に連絡したと主張しているが、警察はこれを否定しており「このような誤解を招きかねないイベントを、警察が許可するわけがない。本物のすりを擁護することにつながる可能性もある」と、非難するコメントを21日に発表した。ただし、警察はキャンペーンの中止は命じてはいないという。

 トーク・トークの広報担当者によると、「プット・ポケッティング」は法的に許容範囲内のイベントで、警察には事前に非公式だが話してあった。しかし、現時点では問題は「すっかり解決された」という。

「プット・ポケッティング」集団のリーダー、クリス・フィッチ(Chris Fitch)さんは「このキャンペーンの目的は、不況に苦しむ消費者に気分が転換できるものを贈ろうというもの。自分も通行人のポケットにお金を入れるたびに、長い間すりをしてきたことへの罪滅ぼしができたように思えるんだ」

 フィッチさんによると、「お金を入れる」のにもスリをする時とまったく同じテクニックが必要とされ、結構難しいのだという。

 キャンペーンは当初、ロンドンのレスタースクエア(Leicester Square)、オックスフォード・サーカス(Oxford Circus)、コベントガーデン(Covent Garden)、ウエストミンスター(Westminster)、トラファルガー広場(Trafalgar Square)、サウスバンク(South Bank)、地下鉄構内などだけで行う計画だったが、9月には規模を拡大して他の地方でも展開される予定だ。(c)AFP

【参考】トークトーク発表の映像