【7月24日 AFP】オランダ政府は23日、1838年にオランダ植民地政府が処刑したゴールドコースト(現ガーナ)のアハンタ(Ahanta)族の王バドゥ・ボンス2世(Badu Bonsu II)のビン詰めされた頭部を、ガーナ政府に返還した。

 ハーグ(Hague)の外務省の会議室で行われた返還式には、葬儀用の赤と黒の伝統衣装をまとったガーナの政府関係者とアハンタの人びと、およびオランダ政府関係者が出席し、返還証明書に署名。その後アハンタの長老たちが、呪文を唱えながら会議室の床にアルコールをまくなどして、バドゥ・ボンス2世の霊を呼び出す儀式を行った。

 オランダ政府によると、バドゥ・ボンス2世は1838年、当時ゴールドコーストの一部を治めていたオランダ植民地政府の役人2人を殺害し、アハンタの人民によって植民地政府に引き渡された。その後、反逆罪で死刑判決を受け絞首刑に。遺体から切り取られた頭部はホルムアルデヒドに漬けられて保存され、オランダに持ち去られていた。

 この頭部は数年前、オランダ西部のライデン大学(Leiden University)で骨標本コレクションとして保管されているのが研究者により発見され、前年にこれを知ったガーナ政府が返還を求めていた。

■アハンタの長老は「過去の出来事」

 バドゥ・ボンス2世の子孫にあたるJoseph Jones Amoahさんは、返還式の後で記者団に対し、涙ながらに「とても悲しい。先祖は殺されたのだから」と話した。また、バドゥ・ボンス2世は当時の奴隷貿易から人民を守ろうとした英雄であり、権力掌握を狙う敵に「裏切られた」のだと説明した。

 一方でアハンタの族長は、通訳を介して「われわれがまだ生まれてもいない大昔に行われた出来事」と話し、寛容の姿勢を示した。

 王の頭部は24日にガーナの故郷に戻り、現地で盛大な葬儀が行われる予定となっている。(c)AFP/Mariette le Roux