【7月22日 AFP】ジンバブエの観光産業が底打ち状態になってから10年。同国の観光の目玉、ビクトリア滝(Victoria Falls)の地元は、来年のサッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)を好機ととらえ、ぜいたくと冒険を味わえる観光地として名声を復活しようとあの手この手を打っている。

 世界最大の滝を擁するビクトリアフォールズ(Victoria Falls)市は、かつては観光客であふれかえっていたが、ここ何年かの政情不安や暴力、経済崩壊により、観光客はジンバブエを避けるようになった。ビクトリア滝を訪れる観光客が、ザンベジ(Zambezi)川対岸のザンビア側に宿泊するというのも見慣れた光景だ。

 数字にもよく表れている。10年前、ジンバブエを訪れた観光客は140万人で、4億ドル(約370億円)の経済効果を生んだ。一方、前年の観光客は22万3000人、経済効果は2910万ドル(約27億円)にとどまった。

 それでも、地元ホテルのある支配人は、去年に比べるとだいぶマシになっていると語る。

 同国では前年、大統領選の結果をめぐって暴力が横行したが、今年2月に連立政権が樹立されたあとは、経済は安定し、暴力も収束している。観光業にとっては明るい兆しだ。

■利益と環境保護のせめぎ合い

 ビクトリア滝は南アフリカのヨハネスブルク(Johannesburg)から飛行機でわずか90分の距離だが、来年6月11日-7月11日に開催されるサッカーW杯から利益をいかに獲得するか、ジンバブエは苦しい模索を続けている。

 ジンバブエの国営メディアは前月、ビクトリアフォールズ市内の各ホテルが国際サッカー連盟(FIFA)が提示する観戦者向け宿泊料金に合意しなかったと批判的に報じた。FIFA側は1泊500ドル(約4万7000円)以下を提示したが、ホテル側は1000-3000ドル(約9万4000円-28万円)で譲らなかったという。

 同市は、ヘリコプターからの上空観光を売りにしてサッカーファンらを呼び寄せる計画を立てているが、ここにも問題が持ち上がっている。これまでに認可を受けたヘリは全部で6台。しかし計画では28台を用意する予定で、狭い飛行エリアにおける安全性や、騒音公害、環境への影響についても懸念される。

 滝の周辺にはゾウ、カバ、サイなどの大型動物や希少動物が生息し、この一帯は動物保護区に指定されている。ある自然保護活動家は、騒音は動物たちの移動を余儀なくし、繁殖にも影響すると危惧(きぐ)する。野生動物へのこうした悪影響は、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の「世界遺産」のタイトルをはく奪される危険性もはらんでいる。

 同市のNkosilathi Jiyane市長は、「市にとって、利益と環境のどちらをとるかは、最も難しい決断の1つ」と話す。

 観光客誘致の議論は、前年にコレラが大流行したあおりを受けて一時中断されていた。Jiyane市長は「統一政府が樹立され、ワールドカップがせまっているという状況は、ジンバブエが良い方向へと転換するチャンスだ」と力強く語った。(c)AFP/Godfrey Marawanyika