【11月10日 AFP】AFP記者を小さな畑に案内してくれたアシェナフィ・チョテ(Ashenafi Chote)さん(25)は、頭を振りながら、後悔を口にする。「わたしは間違っていた。(バイオ燃料開発企業の)申し出を受け入れるべきではなかった」

 首都アディスアベバ(Addis Ababa)から南に350キロのウォライタ(Wolaytta)地方ソド(Sodo)は、たびたび干ばつと水不足に見舞われてきたが、アシェナフィさんの畑は過去10年間、家族4人分のおなかを満たすのに十分な食糧を供給してきた。余剰分は市場で売ることもできた。だが、数か月前にバイオ燃料用作物の栽培に切り替えて以来、貴重な収入源が枯渇してしまった。家族は今や、支援団体の援助物資に頼らざるをえなくなっている。

 ウォライタ地方では、地元民の主食であるトウモロコシ畑が、トウゴマ畑にゆっくりと姿を変えつつある。

 貧困国エチオピアは、原油価格の高騰でさらなる打撃を受けた。そこで政府は、前年に制定した国家プロジェクトの一環として、40万ヘクタール以上でバイオ燃料用作物を栽培する計画を打ち上げた。バイオ燃料の開発は、現在も高く推奨されている。エチオピアの耕作地は全土の18%に過ぎないが、外資系にはインセンティブ(奨励金)が用意され、稼働までのプロセスが比較的容易なこともあり、海外のバイオ燃料開発企業の参入が相次いでいる。

 水資源・鉱山エネルギー省は「既存の農地をバイオ燃料用に転換することはありえない」としているが、ウォライタ地方では、アシェナフィさんら数千人の農民が「主食であるトウモロコシ、キャッサバ、ジャガイモの栽培をやめて、バイオ燃料用作物を栽培するよう、言葉巧みにだまされた」と憤る。

 農民たちによると、米国・イスラエル系のGlobal Energy Ethiopia社は当初、ヒマシ油を生成するトウゴマの栽培用に2700ヘクタールを確保し、「年間で3回収穫できる。50ドルの賃金を支払う」などと言ってトウゴマの栽培に誘導した。しかし、6か月たっても収穫はなく、賃金も支払われていないという。

 現在、この地方では9500人以上がトウゴマを栽培しているが、その大半が従来の農地を使用している。これについて、親会社のGlobal Energy社は、「トウゴマについては、農地の3分の1を超える栽培は許可していないので、食料生産の低下を招いてはいない」と反論する。また、地元民に対し教育、医療などのサービスを提供する計画があり、環境保護にも尽力していると主張する。賃金の不払いについては、「銀行ローンの受け取りが遅れているため」と説明した。

 一方、環境保護活動家らは、トウゴマを栽培する農家に対し、栽培をやめるよう呼びかけている。「食料の確保が厳しい地域でバイオ燃料用作物を栽培することは、許されるべきではない」と、ある活動家は話した。(c)AFP/Aaron Maasho