【7月16日 AFP】米郵政公社(United States Postal ServicesUSPS)は15日、アフリカ系米国人歌手ジョセフィン・ベイカー(Josephine Baker)の記念切手を発行した。

  切手のデザインはジョセフィンが出演した1935年のフランス映画『Princess Tam-Tam』のポスターを基にしている。米国に生まれその官能的な風貌で知られたジョセフィンだが、米国では人種差別を経験。その後、フランスに移住し、欧州各地で人気スターとなり旋風を巻き起こした。

 ジョセフィンの養子ジャン・クロード・ベイカー(Jean-Claude Baker)さんは、「母のテーマソングは『Two loves Have I, my Country and Paris(故郷とパリ、私には愛するものが2つある)』だった。アフリカ系米国人の文化に対するこの素晴らしい賛辞に、母はとても喜び感動しているだろう」とのコメントを発表している。

 郵政公社は以前、ベイカーをトップレスのダンサーとして描いた水彩画のデザインの郵便はがき1万5000通を、ポルノ的だとして受け取りと配達を拒否していた。これはアンリ・フルニエ(Henry Fournier)の1926年作品を用いたもので、ジャン・クロードさんが母親をたたえてオープンさせたニューヨーク(New York)のレストラン「Chez Josephine」の宣伝のために送ろうとしたものだった。

 ジャン・クロードさんは郵政公社の取り扱い拒否に対し、ニューヨーク人権擁護連盟(New York Civil Liberties Union)の協力を得て郵政公社と争い、2007年5月、ついに配達の権利を獲得。郵政公社はジャン・クロードさんに謝罪した。

「ジョセフィンのモノクロ写真だったら問題として扱われなかっただろう。だが、あれは画家による芸術作品であり、米国で郵送できる権利があるとわかっていた」とジャン・クロードさんは語った。

 ジョセフィン・ベイカーは1906年、ミズーリ(Missouri)州セントルイス(St. Louis)に生まれ、人種差別を経験した。当時、映画館などでは、白人と黒人の座席は分けられていた。

 欧州でスターとしての立場を確立したのち、ジョセフィンはたびたび米国に戻り公民権運動に参加した。1963年に行われたマーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr.)牧師のワシントン大行進にも参加している。

 今回のジョセフィンの切手は、郵政公社が黒人の映画を記念して発行したシリーズのひとつ。Delores Killette郵政公社副社長はこれらの切手が「忘れられてしまうかもしれない文化的現象の記憶を守る、歴史の貴重な1ページ」になるだろうと語った。(c)AFP