【5月23日 AFP】(写真追加)11日間の日程で英国訪問中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世は23日、チベットの人権を擁護しつつ中国政府への刺激を避ける均衡の取れた外交を模索するゴードン・ブラウン(Gordon Brown)首相と会談を行った。

 両者の会談はロンドン(London)ダウニング街(Downing Street)の首相官邸ではなく、市内にある英国国教会カンタベリー大主教の公邸で行われた。

 大主教公邸前には親中国派やダライ・ラマに批判的な仏教団体「ウェスタン・シュグデン・ソサエティ(Western Shugden Society)」のメンバーなどが小規模なデモを行った。

 トニー・ブレア(Tony Blair)前首相、ジョン・メージャー(John Major)元首相ともに首相官邸でダライ・ラマと対面していることから、ブラウン首相の選択に批判が集まっている。

 前日22日に議会外交委員会で証言を行った際、ダライ・ラマは、会談に対する批判的意見は特に気にしていないと発言。ただチベットに対する英国の支援は十分かと問われると「十分とは思わない」と答えた。

 一方、3月のチベット暴動発生時、中国政府の対応を「残念に思う」と発言したブラウン首相は、ダライ・ラマとの会談場所は特に重要な問題ではないと述べ、会談場所に首相官邸ではなく大主教公邸を選んだのは中国政府に対する「へつらい」ではないのかとの批判をかわした。

 ダライ・ラマは30日まで英国に滞在し、その間、人権保護・平和問題の会合への出席、国会議員との会談など、さまざまな予定が組まれている。だが、首相との会談以上に注目を集める機会はないだろう。

 22日には、ロンドン到着後ダライ・ラマが初めて公の場で話すとあり、ロイヤル・アルバート・ホール(Royal Albert Hall)前に支援者・反対者双方が合わせて1000人以上集まり、デモが繰り広げられた。 

 演説の中でダライ・ラマは、「四川大地震への対応から開放性・透明性がうかがえるのは望ましい兆候だが、中国政府は依然として真の超大国としての道徳的権威に欠けている」と発言。一方で、西側諸国は中国と経済面で良好な関係を結ぶ必要性に理解を示した。

 演説終了後はクラレンスハウス(Clarence House)に招かれてチャールズ皇太子(Prince Charles)「霊的な問題」について談話。植樹と祈とうも行った。(c)AFP