【3月21日 AFP】インドで亡命生活を送っていたバングラデシュ人作家タスリマ・ナスリン(Taslima Nasreen)さんの作品を扱う出版社と後援者は20日、イスラム教徒の暴動を恐れてナスリンさんに出国を強いたとして、インド政府を非難した。ナスリンさんは19日にインドを出国している。

 ナスリンさんは1994年、小説『ラッジャ(Lajja、恥)』でイスラム教を冒涜(ぼうとく)したとして信者の非難に遭い、母国を離れて亡命生活を送っていた。

 ナスリンさんは「原理主義も同然」と政府を非難。政府はナスリンさんへの適切な医療措置を拒否したほか、政府が提供した隠れ家を「死の部屋」と呼んでいたという。

 インド国内でナスリンさんの作品を扱う出版社は「彼女の才能を政府は台無しにしている。非人道的だ。彼女はいま、重たい高血圧を患い、そのために心臓と目も深刻な状態になっている」とし、「いわゆる世俗国家がこのような行為に及ぶとは残念だ。本来なら政府は、彼女を非難する人たちから守るべきなのに」と述べた。

 政府はナスリンさんの出国に対してコメントを発表していない。ナスリンさんは当初、コルカタ(Kolkata)に滞在していたが、著作が冒涜的だとして前年11月、イスラム教過激派が殺害予告をするなどし暴徒化。コルカタを追放され、首都ニューデリー(New Delhi)で政府に保護されていた。

 20日のヒンズー(The Hindu)紙はナスリンさんの談話として、ロンドン(London)にいるが、「安全上の理由」から最終目的地は明らかにできないと伝えている。(c)AFP/Penny MacRae