【3月11日 AFP】ベストセラー作家で元政治犯の姜戎(Jiang Rong)さん(62)は、長い間自身の本名「Lu Jiamin」を隠し続けてきた。

 しかし、自身の著書「神なるオオカミ(Wolf Totem)」が大成功を収め、アジア版ブッカー賞(Booker Prize)ともいえるMan Asian Literary Prizeを受賞。さらに映画化の権利を「ロード・オブ・ザ・リング(Lord of the Rings)」シリーズのピーター・ジャクソン(Peter Jackson)監督が手にしたことにより、Luさんは本名を明らかにすることを決意した。

「神なるオオカミ」は、Luさんが1970年代に10年以上過ごした内モンゴルでの生活をもとに、そこでの伝統と近代化のはざまの葛藤(かっとう)を描いた作品。執筆には20年以上を要したという。

 2004年に発売された同作品は、中国で260万部――ほか海賊版が1700万部――を記録するベストセラーとなった。

 北京でAFPのインタビューに答えたLuさんは、「『神なるオオカミ』のキーワードは5つ。自由、独立、競争、そして粘り強さと団結心です」と述べた。

 元政治経済学教授のLuさんは、自由の価値を人一倍理解している。1989年の天安門(Tiananmen Square)事件で民主化運動に関わったとして投獄されていたからだ。

 Luさんは、「反革命分子であるとの理由で、塀の中で1年半を過ごした。非常に重い罪だったので、解放された後も仕事が見つからなかった」と当時を振りかえった。

 その後、Luさんは「神なるオオカミ」の執筆に没頭する。だが、「反革命分子」扱いが付きまとうことが分かっていたため、それを隠すために「姜戎」という分身を生み出した。

 Luさんは、「最初は違和感もあったが、今では大した問題ではない。誰もがわたしの話を知っているし…インターネット上にもあふれている」と語った。(c)AFP/Francois Bougon