【家族計画国際協力財団(ジョイセフ)】
(財)ジョイセフ(以下ジョイセフ)は、2004年から、4万個以上の使用済みのランドセルをアフガニスタンへ贈っています。
受け取るのはアフガニスタンの東部、ナンガハール州の村の学校の子どもたち。
アフガンの子どもたちは樹木の下や廃虚の壁の日陰を利用して、地面に座って、ぼろぼろの黒板で勉強しています。
(現在ナンガハール州では400校のうち264校が青空教室。)

■低就学率と早い結婚、多産・・・ アフガン女性の厳しい環境
「ランドセルを背負って小学校に通い続けたい。一生懸命勉強していつかアフガンのために働くの。」とランドセルを受け取った5年生のバスミナ(女)さん。
アフガンでは小学校の教育を受けることができる女子は54%。男子の半分以下。
公の統計に出ない実態はもっと低いです。
さらに中学の女子の就学率は5%。
特にナンガハールのような農村部では女の子の中途退学率がとても高いです。
家の手伝いや早い結婚が退学の理由です。バスミナさんの学校では75%が6年になるまでに中途退学してしまいます。
アフガンでは女の子たちは十分な教育を受けないまま、12~3歳で結婚を始め、出産が始まります。
多産が美徳と考えられているため、合計特殊出生率(※)は7.18。(※一人の女性が一生に産む平均子ども数。)日本の5.7倍です。
読み書きがでず健康や衛生の知識がないことが、十代の妊娠の危険と直結しています。
母体が十分に発達しないまま出産をする少女たちの多くは、クリニックに行く必要性が分りません。
無医村では伝統的な助産師(村のとりあげ婆さん)が立ち会いますが、慣習や迷信に頼っているため、不衛生で危険なお産が多く妊産婦死亡率も世界2番目に高い1900/出生10万件となっています。 
日本の350倍以上の死亡率です。

■慣習・迷信に起因する不衛生で危険なお産をしているアフガンの女性たち
妊娠・出産に関わる慣習や迷信は母体と新生児にとっても危険なものが多くあります。
例えば、へその緒を石の上に乗せてナイフで切って赤ちゃんの首に巻くと健康な子が育つなど。
異常出血もかまどの灰や地面の土を塗ると止まると信じられており、お産の際だけでなく普段の怪我にも使用されています。
また、どの家庭も一部屋しかない土塀の家に一家で暮らしているうえ、出産は他人に見られてはいけない不浄なこととされているため、お産は不衛生な牛やヤギを飼う家畜小屋で隠れてひっそりと行われます。
さらに妻になった女性は日常的に他の男性に顔を見せたり肌をさらしたりすることはできないため、母体に危険な状態が生じても、男性の医者が多い病院で容易に診察を受けることさえできません。
ジョイセフはそのような状況に置かれているナンガハールの妊産婦の健康を守ろうと、現地のアフガン医療連合と協力して、2002年より母子保健活動を実施しています。
主な活動はクリニックの運営、伝統的な助産師の研修、住民への保健指導などがあります。
活動を進めるうちに母子の健康には地域や女性の教育が密接に関わっていることが明らかになってきました。
妊婦に情報を与えることに対し非協力的な姑や夫も多く、また文字の読めない妊婦や助産師が多いため、知識を広めるのにも忍耐と時間がかかります。
小学校の初等教育の6年間だけでも受ける機会があれば、彼女たちは将来自分や家族の健康を守る知識を手に入れることができます。

■ランドセルが学業への意欲に。
ランドセルは大きくカラフルで、形に特徴があるためとても目立ちます。
何もない農村地域では配付から1年であっという間に学校へ通う子どもたちの象徴となりました。
これまで何も手に持たずに地面に指でなぞって字を書いて勉強していた子どもたちですが、今は背中のランドセルの中でカタカタと学用品が音を立てています。
貧困のために、子どもの就学に同意しなかった親たちも、子どもに日本から贈られたランドセルを背負わせて勉強させてやりたいと気持ちになってきました。
ストリートチルドレンも、ランドセルが欲しいと訴え、小学校の始業式に出ようとしています。
配付した村では地域全体が教育水準を少しでも高めるために積極的に取り組むようになっています。
村の長老は「ランドセルを配りながら、次はオンボロ校舎をどうにかしてやらなければ。」と語りました。
学校の校長は「ランドセルを男女両方に平等に配ることで女子も同じように学校へ通うのが当たり前になる。男女の機会均等の教育が未来のアフガンを担っている。」と言葉が返ってきました。
日本では当たり前のランドセル、そして小学校教育。
でもアフガンでは教育が受けられず、社会も知らず精神的に不安なまま結婚をして出産をする少女たちがいます。
一人でも多くの少女たちに教育の機会を与え、一人でも多くの人が健康で幸せな生活が送れるように、ジョイセフは今年もアフガニスタンに学用品の詰まったランドセルを届けていきます。

(c) 財団法人 ジョイセフ(家族計画国際協力財団)
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