【10月30日 AFP】ここ1か月で152頭のイルカの死がいがイラン南部の海岸に打ち上げられるという奇妙な現象が起きている。「集団自殺」との指摘もある中、環境保護団体は29日、地元の漁業活動に責任があるとの見方を示した。

 9月末、79頭のスジイルカがイラン南部ジャースク(Jask)の南港に打ち上げられているのが発見された。さらに前週、別の73頭が同エリアで死んでいるのが見つかった。

 多数のイルカの死がいが横たわる姿は国内各紙で取り上げられ、「自殺」と報じられた。野生のイルカは時に自殺することが知られている。

「ジャースク海岸でのイルカの自殺は続いている。地元民がイルカを海に戻そうとしても、当のイルカが戻ろうとしない」と27日の政府系新聞は報じている。

 イルカの大量死に対する懸念が高まる中、環境保護団体の副代表を務めるMohammad Baqer Nabavi氏は29日、イルカの死がいを前に記者会見を開き、「自殺」問題について次のように述べた。

「1か月前の調査では、イルカの組織から汚染物質は検出されなかった。われわれは、イルカの大量死は漁業に遠因があると考えている。ペルシャ湾に設置された定置網のような大型の網に引っかかったイルカが、おぼれた可能性が高い。イルカは海洋生物だが、水面に出て呼吸する必要があるからだ」

 記者会見用にイラン南部から運ばれてきたイルカには打ち身や切り傷があったが、消化器官からは汚染した魚を食べた結果生じる汚染物質は検出されず、ウイルスや寄生生物も見つからなかったという。

 ただ、これでイルカの大量死の謎が完全に解明されたわけではない。Nabavi氏によれば、さらなる原因究明に向け、石油省、テヘラン大学(Tehran University)、獣医、漁業団体、海軍からなる委員会を設立する。今後2週間かけて、死因を明らかにする計画だ。

 ペルシャ湾では米国の原子力船をはじめとする最新鋭の船舶が任務に当たっているが、これらが使う超音波探査装置が、イルカなどの海洋ほ乳類が距離を把握するために使う「反響定位」能力の妨げになることもあるという。

 スジイルカは、温帯または熱帯水域に生息する個体。腹側は白かピンクで、目の下からヒレまで1、2本の濃紺の筋が入っており、その色から比較的見分けやすい。(c)AFP/Farhad Pouladi