【10月25日 AFP】世界最大の超大型旅客機「エアバス(Airbus)A380」が25日、就航した。大手航空会社はA380の圧倒的な豪華さを利用して、格安航空会社の追撃をかわしたい考えだと航空アナリストは解説する。

 シンガポール航空(Singapore Airlines)は、A380の商業運行第1便をシドニー(Sydney)に着陸させ、競合するオーストラリアのカンタス(Qantas)航空に一撃を加えた。カンタス航空にA380が引き渡されるのは2008年半ばになる。

 しかし大きな視点で見れば、シンガポール航空やカンタス航空のような大手はどこも、格安航空会社による追い上げを視野に、A380導入による短期的な成功を、長期的な市場シェア獲得につなげたい思惑があるともいえる。

 A380は大手航空会社にとって強力な顧客獲得材料になり、乗客は競って座席を獲得したがるだろうと指摘するのは、民間シンクタンク、アジア太平洋航空センター(Centre for Asia Pacific AviationCAPA)アナリストのアダム・カークパトリック(Adam Kirkpatrick)氏。「(A380には)すごい、と思わせる要素がある。(ボーイング)747が小さく見えてしまうほどだ。こんな巨大な鉄の塊が空を飛ぶと考えただけで圧倒される。乗客は一時、多額を払ってでも、自分はA380に乗ったことがあるんだと吹聴したがるだろう」と同氏は言う。

 しかし、この新世代航空機の価値は数年で薄れてしまうだろうことに対し、格安航空会社との競争はなくならないとカークパトリック氏は予測する。スーパージャンボで座席数が増えても航空料金の値下げにつながらず、逆にオアシス香港(Oasis Hong Kong Airlines)、エアアジアX(AirAsiaX)、V-Australia、ジェットスター(Jetstar)などの航空会社が計画どおり長距離便に進出したほうが、料金は下がるだろうと話す。

 シンガポール航空がA380の就航第1便にシドニー行きを選んだのは、このルートが航空業界の中でも特に人気の高いことを考えれば当然だとカークパトリック氏は言う。

 一方、別の航空アナリストは、シンガポール航空がシドニーを選んだのは、オーストラリア政府に対し、高収益が見込めるオーストラリア-ロサンゼルス間の就航準備が整っていることを示す狙いがあるとみている。シンガポール航空は10年越しで、このルートの運行許可を求めているが、オーストラリア政府はカンタス航空の圧力で、これまで何度もこの要求を拒んできた。

「しかしタイミングが悪かった」とこのアナリストは指摘する。「選挙戦の真っ最中に、オーストラリア政府が外国企業を優遇したと思われたいはずはない」(c)AFP/Neil Sands