【10月4日 AFP】(一部更新)ダイアナ元英皇太子妃(Princess Diana)の死因究明のための審理の2日目となる1日、ロンドン(London)の高等法院のスコット・ベーカー(Scott Baker)控訴院判事は、事故当時に元妃が妊娠していた証拠は得られない恐れがあるとの見方を示した。また、通称MI6として知られる英秘密情報部(Secret Intelligence ServiceSIS)が事故当夜、パリ(Paris)にいたとされる件について、元妃と交際相手ドディ・アルファイド(Dodi Fayed)氏の動向を追うより「もっと重要な任務」に就いていた可能性があると指摘した。

 これら2点は、ドディ氏の父モハメド・アルファイド(Mohamed Al-Fayed)氏が、2人の死は英王室からの殺害命令によるものだとする理由の中核をなす。

 審理ではさらに、これまで公開されていなかった、事故発生数時間前の2人の様子を捕らえた監視カメラの映像も公開された。

■妊娠の有無は審理の重要点に

 同日の審理で、ベーカー判事は元妃が事故当時に経口避妊薬を服用していたなどの証拠を挙げ、「いかなる手法を使っても、元妃が妊娠していたとする科学的根拠は得られないかもしれない」と11人の陪審員に語った。

 次期王位継承者のチャールズ皇太子(Prince Charles)と離婚したダイアナ元妃は1997年8月30日夜、パリのアルマ橋(Pont de l'Alma)の下を通るトンネルを運転手のアンリ・ポール(Henri Paul)氏が高速で運転する中事故に遭い、エジプト人の交際相手、ドディ・アルファイド氏、運転手とともに亡くなった。

 この事故に関し、ロンドンの高級百貨店ハロッズ(Harrods)を所有する大富豪、モハメド・アルファイド氏は、2人の死が、エリザベス女王(Queen Elizabeth II)の夫、フィリップ殿下(Prince Philip)とMI6の策謀によるものだと主張。その理由については、36歳だったダイアナ元妃が当時ドディ氏の子どもを妊娠しており、英王室は元妃をイスラム教徒のドディ氏と結婚させたくなかったからだと説明している。 

 ベーカー判事によると、元妃の妊娠の有無は次の2点において審理に影響を与えるという。第1に、元妃の妊娠は元妃殺害の動機もしくは動機の一部となりうるということ。第2に、元妃の遺体に防腐処理を施したのは妊娠を隠す目的となるということである。

 同判事は陪審員に対し、元妃の遺体の防腐処理の決定が違法か否かを判断する必要があると説明。さらに、元妃の元執事のポール・バレル(Paul Burrell)氏に証人としての出廷を求める方針を示した。

■事件当時、パリにいたMI6の目的は?

 さらにベーカー判事は、「1997年8月当時、パリの英国大使館にMI6の職員が派遣されていた」として、MI6職員が元妃が亡くなった週末にパリにいた可能性を指摘。ただし、「MI6の職員が海外に派遣されることはよくあることで、その役割はテロや組織的国際犯罪への対策についてフランス当局との調整を行うことだ」と説明し、MI6の職員が元妃の動向を追っていたのではなく、もっと重要な任務に当たっていたとする見解を示した。

 当時の駐仏英国大使、マイケル・ジェイ(Michael Jay)氏も、「MI6の職員は元妃とドディ氏の殺害計画にも隠ぺい工作にも関与していない」と証言しているという。

■ホテルのエレベーター監視カメラによる最後の映像

 一方、審理ではこれまで未公開だった映像が公開された。この映像は事故発生の数時間前にホテルの監視カメラが捕らえたもので、ダイアナ元妃とドディ氏がエレベーターに乗っているもの、エレベーターの中で元妃がカメラを直視しているもの、通路を歩いているもの、ホテル外のパパラッチの様子などが写っていた。(c)AFP